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夜が、明ける
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早く、早く……!!
まだ薄暗い病院の中を、全速力で走る
途中、看護師から怒られ…早歩きに変えた
俺はパリに帰ってきた後、真っ直ぐ病院に向かった。時刻は朝の5時を過ぎた頃。
特別に許可をもらい、面会を許された
6階の一番端の病室
ドアの前で…乱れた息を整える
「はぁ……」
…………ゆっくりと、ドアを開ける
…相変わらず、綺麗な顔をして、眠っていた
意識は一度戻ったものの、
その後また、深い昏睡状態になったらしい。
俺は顔の前に手をかざした
規則的な、音、呼吸、
息があることを確認すると、安心したように
膝から崩れ落ち、ベッドの脇にひざまづいた
長い睫毛…閉じられた瞳
涙が、溢れそうになるのを必死に堪える
一昨日より少なくなった点滴に繋がれた手を、握る。
握り返しては、くれない
「……お前、いい加減にしろよな……」
動かない唇
握る手に力が入る
「…俺、お前みたいに綺麗な言葉も
優しい言葉も暖かい言葉もかけれないけど…
ようやくわかったんだ。
お前が、いなきゃ、ダメなんだ。
お前が俺の隣にいないと…嫌だ。
おまえがいたから、たくさんのスイーツが
チョコレートが作れてたんだ、って…知った。
お前が、いい。
エリックがそばにいないと…嫌なんだ。」
言葉が溢れて、止まらない
「今頃遅いって…わかってる、けど…
お前が、好き。大好き…
お前の笑顔が好き、
明るくて暖かい優しいお前が好き、
太陽みたいに包み込んでくれるお前が好き…
…好きだ…愛してる……エリック…」
お願い
目を、開けてほしい……
俺は、エリックの唇に
ゆっくりと…優しく
キスをした
「…え?」
繋いでた手を、凝視する
見間違いじゃないその手は、
しっかりと、
握り返されていた
「…ッ……シュ、ン…?」
掠れた、けれどたしかに
名前を、呼んでくれた
「エリッ、ク…」
薄っすらと、開けられたアクアマリンの瞳
「……シュン、キスで起こすって…
…王子様みたいだね…」
そう言い、優しく、微笑むエリックの
顔を優しい光が照らし始める
病室には、朝日が差し込み始めていた
キラキラと…暖かい太陽
夜は、もう、明けていた
「……もう、君を泣かせたく…
なかったんだけどな…」
ゆっくりと頰に伸ばされる手
暖かい、優しい手
泣いてない、そう言おうと思ったのに
頰には冷たいものが伝い、
視界はボヤけて見えなかった
「……バカっ」
思いっきり、抱き着く
涙が、ボロボロと止まらなかった
弱々しく、頭に触れる手
「シュンの…声がしたんだ……俺の名前を
呼んでくれた……。」
俺は、言葉が出てこなくて、エリックの
肩に顔を埋め、頷いた
優しい、太陽の匂い
ずっと、ずっとこうしたかった
もう、大丈夫
きっと、今日から
前を見て
歩いて、いける……
隣に、お前がいれば、
大丈夫だって、思えるから
「…シュン、ありがとう」
………愛してるって、言ってくれて……
優しく、触れる唇
いつ振りかもわからないくらい
甘く、甘く…どこか、ほろ苦くも感じた
名残惜しそうに離れた後
2人は小さく笑い
もう一度………チョコレートを
楽しむようにキスをした
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