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春が、くる
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───2週間後───
あれから、俺達を取り巻くものは大きく変わった。
俺は、医者に回復の早さに奇跡だと何度も言われた。そもそも、あんな事故にあったのに
すぐに意識が戻ったこと自体、奇跡だったらしい。
ヨーロッパ大会のことも、聞いた。
アクシデントがあったこと…これは本当に許せない。
でも、イタリア代表チームの良い人達の
おかげで助かったこと、シュンが一人でも
やりきったこと……2位として、
世界大会に行けること。
これは、本当に嬉しいと思ったんだ
まだ、シュンといれる。
それから…季節は寒い冬から暖かい
春になり、かなり過ごしすくなってきた。
学園に戻ってからは、3年生には卒業試験が
待っていた。スイーツのことだけではなく
普通学科も入ってくる試験。
この試験では例年必ず全員が落ちるといっても
いいほどの難関問題ばかりだった
「くっそ……!全然わかんないんだけど!?」
日差しの良い午後、テラス席で補修問題と
睨み合うゼン。ちなみに彼は2回目の補修問題。
大抵の生徒は5回目でようやく上がるって、
先生も言ってた
「ゼン、ここ違うよ?」
指で間違いを指摘すると、ゼンは中国語で
何かを言って頭を抱えた
「はぁん!?……ったく、毎年不合格の
奴しかいないこのテストを一発でパスする
なんてネー!さすが秀才クンは違うよねっ!」
「お褒めのお言葉、感謝致します」
ニコリと微笑むと、ガンッ、
と机に額をぶつけ動かなくなったゼン
その様子にクスリと微笑み、読みかけの本を開く
「うっわぁ〜、シュン見てぇ、変な人がいるぅ」
少し遠くで聞こえた高めの声に、顔を上げる。
少し向こうの校舎の方からの道を歩いてくる2人組
ルイに指さされた方向を見て、
小さく笑う彼は相変わらず綺麗だった
「何してんの?」
そう言いながら俺の腕を押しながら横にずれろと
言わんばかりに当たり前のように隣に座るシュン
その仕草に、思わず笑みが
こぼれるのを隠すのが難しい
「卒業試験の追試、シュンはどうだった?」
実は、シュンも受けていたんだ。
シュンは無理して3年の分も授業や補修、
勉強を続けた結果、先生が、
是非卒業という形で留学を終えれば良いと言うからね
無理はしない方がいいって言ったんだけど、
一度決めたことは絶対にやり通す彼。
1回目は落ちてしまったけれど、
この前やっていた2回目の追試は
どうだったんだろう?
「今出してきた。ゼン、」
「うん?」
「俺、受かっちゃった」
合格、そして先生のサインが書かれた
レポートをゼンの目の前に突き出し
クスリと小悪魔的にほくそ笑む彼
ゼンからは、ガーンという効果音が
聞こえそうな勢いだった
「うわ、もう…俺、はは……」
「あはは〜、ゼンかっこわるぅい」
「いやいや、こんなくそ難しい問題一発とか
2回目だけで上がるコイツらのほうが
おかしいんだって、わかる坊ちゃん?」
棒読みのゼンに、シュンがさらに追い討ちをかけた
「だって、俺だからな?」
クスッと勝ち誇ったように微笑む
その横顔に、安心する
見ていたのがバレたのか、シュンが俺を見上げる
「んだよ…」
「いや、今日もかわいいなぁって」
ギャイギャイと言い合うルイとゼンに
聞こえないよう、そう、伝えると
いつも通りシュンはこう答える
「はぁ?うっざ。」
本気で思ってないって、わかる
満更でもなさそうな顔だから。
少し、嬉しい?
なんて聞いたら、怒られるかな
スッ、と机の下のシュンの手を繋ぐ
すると…握り返してくれた
少し、驚き、シュンを見る
「変われた、ね」
「ばーか…お前が、俺を変えてくれたんだろ」
そう言って綺麗に微笑むシュン
嬉しくて、指を絡ませると
2人に気づかれないように、でも
優しく、握り返してくれた
繋がれたら手の間を春の温かい風が吹いた
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