アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
3 《睡郷》
-
ヒーローになりたかった
て言ってもバレーでの話だ
小さい頃、スポーツ好きの親父に連れられて色々なスポーツ観戦をした
その中で俺の心を強く打ったのは、野球でもサッカーでもなくバレーボール。
ルールなんて知らない。
だた親父からは3回で返し、ボールを落とした方が負ける
そう聞いただけだった
小さい頃の俺にしてみれば、分かりやすくシンプルなルールで見やすかったんだと思う
俺が見たのは確かアメリカとブラジルの試合。
俺の目を引いたのは、その図体のでかい選手の中で頭一つ違うセッター
頭一つ違うと言っても今の俺より遥かに高く、でかい選手
相手コートから見ていたその選手は時折不適に笑うのだ
そうすると必ず、相手コートにボールが落ちる
かっこよかった
誰よりも小さなその体が誰よりもボールを触り誰よりもヒーローに見えた
あんなヒーローになりたいとその時思った
親父にそれを話しても目立たない選手で覚えてないと言う
スポーツ少年団に入れる年にバレーボールを選んだ
迷わなかった
そっからは無我夢中だった
ボールを触るのが楽しくて毎日が充実していた
気がついた時には日本代表の少年の部に所属して、努力して、セッターになった
けどそこからは地獄だ
過度の重圧と戦う日々
学校には週に2回行ければいい方だった
友達はいない
学校に居ても、バレーをしてもそれは変わらなかった
目指していたものが見えなくなる日々とそれに抗う日々
交差する中で俺をさらに追い詰めたのは、チームからの嫌悪と嫉妬
劇的な何かがあったわけではない
ただ少しずつ徐々に絡め取られるような恐怖
そんな中、相次ぐ怪我
最後の試合は、中学の部活の中総体
ぼろぼろの体で臨んだ決勝戦。俺は負けた
多分、中学に入って国内で初めてだった
「随分うなされていたようですが大丈夫?田所くん」
目が覚めると隣では鵜飼さんが寝ていた
「あーすみません。寝ちゃってましたか」
俺は目じりを押さえる
「気にしないで大丈夫ですよ。合宿、怖いですか」
「え?」
「田所くん、中学は東京の強豪と呼ばれるバレー部だったんですよね。これから行く所に君を知っている人は沢山居ると思います。怖いですか?」
俺は少し考えた
「・・・怖くないと言ったら嘘になります。けど、乗り越えないと先には進めないから」
「田所君は強いですね」
そこから俺と武ちゃんは学校に着くまで色々な話をした
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
49 / 136