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先生と鵜飼さんに止められて仕方なく俺はコートから下がった
気が抜けた瞬間、膝が笑い出す
そのまま壁に背中を預けたまま座り込む
汗を拭こうと頭にかけたタオルにすら手を伸ばすことができない
手に力が入らずボトルを落とさないよう両手で持っているのがやっとだ
これは止められて当然だな
息は全力疾走でもしたのかというほど乱れているし
口元にドリンクを運ぶことも出来ない
ブランクがあると言えど、半分も思ったとおりに体は動いてくれなかったのに
この様か
「大丈夫?綾斗くん?」
優しい声が聞こえた
あ、清水先輩か
取り合えず心配かけないように笑わないと・・・
上手く笑えただろうか
「ボトル貸して、手伝う」
清水先輩は俺の隣に膝を着いてしゃがみ
ボトルを支えると俺の口元まで飲み口を持ってきてくれた
俺は上を向き飲み口をくわえる
清水先輩がボトルを少し押してくれ漸く飲むことができた
「すみません。清水先輩」
俺はもう一度笑う
多分、さっきよりかは上手く笑えた
「あんまり無理しないで。みんな心配してる」
少し余裕が出来てコートを見るとボールを繋ぎながらもみんなが俺の方を気にかけているのが分かる
あー、俺愛されてるなー
「烏野で・・・よかった」
「綾斗くん?」
俺に清水先輩の声は聞こえなかった
「俺、烏野のバレー部に来れてよかった。バレー諦めなくてよかった」
俺は下を向きボトルを握り締める
「俺、俺っ・・・」
それ以上は言葉が繋がらなくて涙が零れる
嗚咽しながら俺とばかり言う俺に清水先輩は困惑していた
分かっている
けど、止められない
普段表に感情を出さないからか
それとも体力が限界だからか
こうなると自分では止められない
あー頭に酸素が回らない
くらくらする
清水先輩心配してるから早く何とかしないと
早く、早く
口元にタオルがあてがわれた
「綾斗っ。ゆっくり、ちゃんと息しろ」
あー力の声だ
力の臭いだ
年相応の男子の臭いと柔軟剤の匂いが混ざった
力の匂いだ
意識がはっきりしてくる
酸素が脳に回ってきた
前を向いて目を開けるとそこにはさっきまでコートに居た連中が俺の周りにいる
「みんなして心配しすぎ」
俺は息も絶え絶えにいう
「じゃぁそんな風にならないで下さいよ。心配するに決まってるデショ」
「蛍、ごめんな」
俺が笑うとみんながほっとした顔をした
「綾斗っ!無茶は禁止だって言っただろうがっ!」
みんなを掻き分け声を上げなら、鵜飼さんは俺の前に来る
優しい顔で俺の頭を手に置いた
「すみません。鵜飼さん」
「まったく、あんまり心配させんな」
その手は温かかった
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