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side 鵜飼繋心
酔った顔であいつらに会いたくない俺は廊下で先生を待つ事にした
俺が、止めなかったからだ
あの時、俺が綾斗に頼らなければこんな事にはならなかった
後悔先に立たずとはこのことだろうな
綾斗なら何とかしてくれると思った甘い俺がいた
「あ、」
先に出てきたのは立花という医者だった
「このたびは、本当に申し訳ありません。俺は烏野でコーチしてる鵜飼といいます」
俺は立花さんに深く頭を下げた
立花さんは戸を閉めちらりと俺をみる
「酒飲んでたって顔だな。まーいいけどよ。先生も似たようなもんだったしな。うちの馬鹿が世話になってる。これからもよろしく」
「綾斗の体は、治らないんですか?」
過ぎ去ろうとする立花さんに思い切って話を振ると心底嫌そうにこちらに振り返った
「はぁ、あいつの体は治る。手術さえすればな。あんた、中学の時のあいつを知ってるか?」
「いや、話にしか」
立花さんは俺と反対側の壁に背を預ける
目が合った
「中学の時のあいつはバレーボールを辞めたがってた。だからその理由を与えた。医者として、保護者として今でもその判断が間違ってねーと思ってる」
「今なら、手術してくれるんですか?」
「あぁ?」
立花さんの目つきが変わった
「バレーをやりたいと思っている今なら手術するんですか?」
立花さんは俺の胸倉を掴んだ
「ふざけるなよ青二才。お前はあいつの何がほしい?才能か?頭脳か?能力か?感性か?それとも体か?」
押し殺した声は震えている
「こっちは手術しないといった時のあいつの顔が脳裏からはなれねーんだよ。安心しきった、ほっとした顔がっ」
立花さんは俺から手を離した
「あいつにバレーはもうやらせれねー。あいつにはバレー以外に沢山の道があんだ。医者になるだけの頭だって持ってる。あいつにバレーを押し付けるな」
「俺は、綾斗がバレーをやってる姿が好きです」
餓鬼相応に笑うバレーボールをやってる時の綾斗が好きだ
「あいつがバレーをやってない時の顔を知ってますか?諦めきった笑顔を」
もう、ゴールデンウィークの時のようなあんな顔はみたくねぇ
「あんな顔を綾斗にさせたくねぇ!」
立花さんの言ってる事は正しいのかもしれない
「過去がどうだとか俺にはわかんねぇことですけど、今の綾斗の事ならあなたより知ってるの俺です」
それでも俺はもう1度、綾斗にバレーボールを選手としてプレーしてほしい
「だから、綾斗がもし、手術を望んだらその時はよろしくお願いします」
もう1度立花さんに頭を下げる
立花さんは舌打ちをしてその場を去った
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