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俺はその場に座り込こむ
涙が一筋、頬を伝った
それがゆっくりと床に落ちる
俺は今居場所を失った
烏野には帰れない
「うっ…うぅっ…くっ…」
俺は膝を抱え蹲った
心は冷え切っているのにそれとは裏腹に体の火照りは消えない
「消えろ。消えろ。消えろ。消えてくれ。頼むから」
蹲っていると扉が開く、音がした
「あぁー。ここにいたのか綾斗」
顔を上げれば目の前にクロさんがいる
「おわっ、おい。綾斗」
俺はクロさんにしがみついた
クロさんは俺の頭を優しく二度ほど撫でる
「なにがあったんだよ。澤村と」
澤村。
その言葉にどきりと肩を揺らす
クロさんは俺から離れるとすぐに隣に座わった
それから俺は大地さんとのあらまわしを膝を抱えながらクロさんに話した
明日さえ乗り切れば幸いな事に2ヶ月は烏野には帰らない
大地さんに会わなくて済む
けど帰ったところで烏野に俺の居場所なんてもう、ない
俺の頭に大きな手がのった
そして引き寄せられる
「なぁクロさん。もう俺、烏野でバレーできないんですかね。みんなにどんな顔で会えばいいかわからないや」
「なァにそれ。綾斗の居場所ってのは澤村の隣なの?それ以外に烏野に居場所ないわけ?」
「…え」
「そうじゃねぇーだろ。安心して戻れよ。前に綾斗に距離置かれた者として言えば、綾斗に距離置かれんの正直しんどいからよ」
なっ。なんて1つしか違わないはずのこの男は俺の頭をくしゃりとした
「クロさんはずるい」
俺は膝に顔を埋めぼそりとそう言う
「なァに?綾斗?俺の事惚れ直した?」
「最初っから惚れてないですから」
チッと隣から舌打ちが聞こえてきた
それに俺はいつものように小さく肩を揺らして笑う
「たく。少しは落ち着いたか?」
「はい。ありがとうございます」
クロさんの手が俺の頭から離れた
「気にすんな。澤村がさ、青い顔してたから話し聞いてみれば睨まれて大変だったんだよねー」
「…すみません」
「明日、澤村とちゃんと話せ。できるよな綾斗」
「善処します」
立ち上がったクロさんにもう1度頭をくちゃりとされる
「よーし。そんじゃ俺は寝るわ。おやすみ綾斗」
そのままクロさんは教室を出て行った
今日一日でいろいろありすぎて思考が追いつかない
赤葦にクロさんに大地さん
気づいていたけど気づかないフリをしていた人と気づきもしていなかった人
否定も肯定も出来ない今の俺は一体どうするのが正解だったのだろうか
俺はいつの間にかそのままの体勢で寝てしまい、気づけば朝を迎えていた
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