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side 月島蛍
バーベキューも終盤に差し掛かり、僕は澤村さんと綾斗さんが2人で体育館裏に向かうのをみかけた
「おっとツッキーどこに行く気かなァ?」
僕は気づかないうちに足が動き追っていたようでそれを黒尾さんに止められる
「黒尾さん。別に」
いづらくなり僕は目を伏せた
「ま、気になるよな。あれは」
そういってみんなと離れていく2人を黒尾さんは親指で指した
「ずいぶん余裕なんですね。黒尾さんは」
「まぁーね」
にたっと笑う黒尾さんが気にいらない
嫌味の一つでも言いたいのに綾斗さんの事になるとどうも調子が狂う
そんな僕を知ってか知らずか黒尾さんは僕の顔を覗きにぃーっと笑みを深くした
「それに諦めたんだろ?なら綾斗が誰となにしようが関係ないんじゃないか?なぁツッキー」
「嫌だなぁ黒尾さん。僕が気にしてるわけないじゃないですか~」
僕はいつものように薄っぺらい笑顔を浮かべる
「僕は綾斗さんと距離を置くって決めたんですから。それじゃ失礼しまーす」
「たく、ほんッと可愛くないやつ」
距離をとる。そう決めた筈なのに、1時間もしないうちに綾斗さんを目で探してしまう
そんな自分に気づき腹を立てながら、僕は山口のいる方へと向かった
side 澤村大地
片付けも終盤に差し掛かった所で誰かに服のすそを引っ張られた
見ればそこには綾斗が俯いて立っている
俺から俯いた綾斗の顔色は窺えない
綾斗に連れられて誰もいない体育館裏にきた
歩いている間、綾斗は何も話さない
俺だけが馬鹿みたいに、何かを誤魔化すように言葉を発した
「呼び出してすみません。大地さん」
誰もいない体育館裏に付くと俯いたままの綾斗がそう呟く
「いや、俺は綾斗ともう話せないと思ってたから嬉しいよ」
綾斗は俯いたままだ
両手をぐっと握り締めるのが見える
「大地さん。俺は、人の好意を受け取るのが苦手です」
小さめの声でそういった後、
綾斗はあの時以来、初めて俺の方をみた
「だから、今は大地さんが俺にした事にどうこたえていいかわかりません」
潤んだ瞳にズキリと良心が痛んだ
それと同時にドキッとときめきを感じる
「綾斗は俺のこと嫌いか?」
本当は『好きか?』と聞きたかった
そう聞いて『好きだ』と答えてほしい
でも、今の綾斗にそれを聞いても残酷な答えしか返ってこないから
それでも、聞かずにはいられない
期待せずにはいられない
「先輩として好きです。人として尊敬しています」
返って来たのは案の定残酷な答え
中途半端に好かれているならいっそ嫌われてしまった方が楽だ
「綾斗は案外残酷なんだな」
苦笑いで俺がそう言うと申し訳なさそうにまた綾斗は顔を伏せた
「・・・すみません」
「俺ここに来るまで、昨日の事なかったことにして今まで通りの先輩と後輩なんて思ってたけど」
だから、俺がちょっとくらいお前に意地悪する事は許してほしい
「やっぱ綾斗にした事、忘れないでほしい。俺が綾斗に対してどう思っているか知っててくれ」
伏せ目がちな綾斗の目が左右に泳いでいるのがわかる
「わかりました。でも」
「あぁ分かってる。これは気持ちの問題だから、今まで通りでいいよ」
俺は綾斗の言葉を遮った
それ以上は綾斗の口から直接聞きたくなかった
「ありがとうございます」
そのほっとした顔に少しムカついて、だから俺は一歩前に出た
驚いて顔を上げた綾斗の唇にそっと優しく口付ける
「さ、戻るか。あんま綾斗を独占してると怒るやつらが多いからな」
にっと笑って俺は綾斗に背を向けた
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