アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
4
-
いつの間にかベッドから降りた及川さんがコップに水を注いでくれた
俺は一気に水を飲み干す
のどにはまだ何か張り付いているようだ
「気持ち悪い」
「エッ!孕んじゃった?」
「あんたアホだろ」
「! アホ…」
うなだれた及川さん
どこからどこまでが本気なのか
俺が無言でコップを差し出すと及川さんは水を注いでくれる
「俺、あーやんに無理させちゃったね」
「無理って言うか…」
改めて言われ、自分の行動がフラッシュバックした
俺、及川さんの…マジで
飲んじゃった?
顔に熱が集まるのが分かる
俺は水を一気に飲み干し机の上においた
自分の顔を左手でおおう
及川さんの匂いがした
「あーやん?」
「…なんでもないです」
及川さんの顔が見れなくて匂いのする手を離せない
ガラッ
少し気まずい空気の中、扉を開く音がした
「はぁ、何してんだよクソ川」
「…岩ちゃん!?なんで!?」
顔を上げると鬼の形相をした岩泉さんがいた
「お前の母さんから連絡もらったんだよ。うちの息子が昨日の夜からいないって」
「ちょっと東京に行って来るって置手紙残したのに!」
「親に心配かけてんじゃねェ!ボゲがァ!」
うわぁ本当に青城って仲いいなー
「「仲良くない!!」」
額がくっつくんじゃないかと思うほど近くで言い合ってた2人が同時に俺を睨みつけてくる
「ぷっ ふはははは」
それがおかしい
「え、あーやん?」
及川さんのきょとんとした顔も
「ふっちょっと、あはは」
「おい、綾斗」
岩泉さんの困ったように下がった眉も
「やばいっいひひひ、とまらなははは」
どれも俺に不釣合いで笑いが止まらない
だって、こんなやり取りを間近でみれるなんて思ってもみていなかった
仲のいい輪に入れるわけじゃないけれどその輪に入れてもらえたそんな気分
「はぁはぁ。はぁー笑い死ぬかと思った。腹いてぇ」
ようやく笑いが止まったときには俺の目には涙がいっぱいで腹筋は痛かった
及川さんがトイレに立ち上がる
俺が笑いすぎたせいで牙を抜かれたような顔の岩泉さんは及川さんが座っていた椅子に座った
「手術成功したんだよな。いつからバレーできるようになるんだ?」
「一応明日から歩行訓練です。バレーが出来るようになるのは1ヶ月先か2ヶ月先か、はたまたそれ以上か」
左手の平を上に向けて首を振り俺は、お手上げと告げた
「そうか、2ヵ月後は10月だな。春高予選それまでに治せよ」
8月も数日経ち俺は正直焦っている
1週間歩いてもいないのだ
だから、正直約束なんて出来ない
俺が目線を落とすと岩泉さんは俺の頭に手を置いた
大きく厚みのある手だ
「焦る必要はないだろ。まだ2ヶ月あるんだからよ」
「…はい」
頭にあった手が離れ、顎を持ち上げられるのと同時に唇に柔らかい何かがぶつかる
それが岩泉さんの唇だと理解するまでに数秒掛かった
唇はすぐに離れていった
「そんな寂しそうな顔するなよ。もっとしたくなる」
少しかすれた普段聞かない岩泉さんの声
不覚にも俺はどきりと心を持っていかれそうになる
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
132 / 136