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春。
学園中に植えられた桜が満開に咲き誇る四月。
俺、伊織 優真(イオリ ユウマ)は、高校二年に進級する。
***
ピピピピピピ..ピピピピ....
「んぅ...ン」
ガチャーーー・・
朝の9時を告げるけたたましい機械音で目覚めた俺は、眉間にしわを寄せ、ゆっくりと瞼を開ける。
鳴り続ける機械を手探りで止めれば再びシン、と静まり返る室内。
慣れない静寂に、俺の寝ぼけた頭は一気に覚めた。
いつも騒がしく俺を起こすアイツの声がしない。
「....貴明?」
慣れ親しんだ男の名前を呼ぶ。
しかし返事はない。
そこで俺は、もうこの部屋にはアイツがいないことを思い出した。
「あー...そっか。今頃外国か」
思い出した途端、全身の力がふっと抜ける。
俺の通う私立学舎学園は街から離れた場所にある全寮制の共学校で、生徒は例外なく校舎から徒歩五分圏内にある、いくつかの寮に入寮しなければならない。
俺の部屋は、第二男子寮801号室。
春休み前まで同室だった男、貴明は家の都合とかで三学期を終える前に転校した。
一年間二人で使った部屋にも、今は俺しかいない。
シワのないシーツをかけられ綺麗に整えられたベッドを見て、改めて少し寂しくなる。
「....と、ヤバい。こんなこと考えてる場合じゃない」
ハッと我にかえった俺は、変な感傷に浸ってしまった気持ちを切り替えてベッドから降り、朝の支度を始めた。
洗面所で顔を洗い歯を磨いて、制服に着替える。
その途中、グルグルと空腹を知らせてきた腹の虫。
「腹減った」
呟いた俺は、室内に設置してあるキッチンを見た。
少し豪華な学園の寮には、一部屋にひとつ小さなキッチンが付いているけど、ほとんどの生徒は寮内にある食堂を利用する。
料理なんかした事のない俺も、入学して早一年ここの学食にはほぼ毎日お世話になっている。
誰もいないキッチンを見つめたって料理は出てこないし、冷蔵庫にだってロクなものは入っていない。
さっさと食堂に行くか、と俺は床に置いてあったスクールバッグを手に取る。
「行ってきまーす」
体に染み付いたクセで、誰もいない部屋に挨拶を置いて、俺は一階にある食堂へ向かった。
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