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3話
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「君、大丈夫?起き上がれるかい?」
「うぅ…」
トマが目を覚ますと見知らぬ部屋と知らない男性がこちらを覗き込んでいる光景。
何が起こっているのかも分からず、だがとりあえずはまだ実態がある。
ほっと胸をなでおろしたのも束の間、バッと顔を上げ見知らぬお兄さんを見た。
「気がついて良かったよ、身体は大丈夫?」
「す、すすすみません!ぼ、僕…トマって言います…あの…ここは…?」
「あ、ここは俺の家だよ。病院に連れてこうにも、君保険証なかったし…どうしようか考えてたら、小さい声でお腹空いたって言ってたからとりあえず家にと思ってね。」
トマはかぁっと頬が赤くなるのを感じた。
「ご、ごめんなさい…ご迷惑を…おかけしちゃって…ぼ、僕…インキュバスで、でもダメダメだからマナもつきちゃって…
…って…あっ喋りすぎたぁ!」
お兄さんを見てみるとポカーンとしている。
「インキュバス…?マナって……トマ君、もしかして厨二病とかいうやつかい?」
お兄さんは冗談だと思ったらしくははははと大きい声で笑っている。
トマは真っ赤になった顔を隠そうと俯いた。
だが、はっと閃き、事情を説明してどう解決すればいいか意見を貰おうと思い直した。
「あ、あの…実は冗談ではなく、僕はインキュバスという悪魔でして…悪魔は決められた悪行に対して一定以上の成績をあげなければならないのです…。僕の場合は淫欲を集めることなんですが…」
「ふむ、そういったルールがあるのか。マナっていうのは何なんだい?」
「あ、それは一定以上の悪行を達成した際に貰える、実体を保つ為の力です…これがないと僕達は消えてしまうんです。」
「それじゃあお腹空いたって言ってたのはマナってやつが切れちゃったのかい?」
「はい………お恥ずかしながら、僕は万年最下位の成績で、インキュバスのくせに女の人が興奮できずむしろ可愛がられてしまい…全然ダメダメで……」
「確かに可愛いもんなあ…ははっ」
「わ、笑った…ぐすっ」
「ごめんごめん、つい可愛いなあと思ってさ!」
「ひ、ひどい…ぐすっ…。で、でも遂にリーダーから、ターゲットを男の人に変えるように言われてしまって…どうしたらいいのか…うっ…ぐすっ…」
トマは思い出すと更に恥ずかしくなってきてまた涙が止まらなくなってしまった。
お兄さんはそれをみているとさすがに少し不憫に思えてくる。言ってることはよく信じられないが、トマが嘘をつくような子には見えない。
しかも、このお兄さん、なんという幸運かゲイである。
もちろん会社などではノンケを装っているが、れっきとしたバリバリのタチであり、併せて長男だった為か恐ろしく面倒見が良かった。
「トマ君…僕でよかったら、どうしたらいいのか教えてあげようか?」
「…え?」
「僕は営業の仕事をやっているし、一応成績もトップをたとらせてもらえてる。お誘いをするって事に、何かの参考になるかもしれないよ?」
(ホントはゲイだからだけど…)
「い、いいんですか?僕、全然ダメで、いっつも周りの人は諦められちゃって…」
「こう見えてもずっと長男で育ってきてね、面倒見はいい方なんだ、任せてよ!」
「あ、ありがとう…ございます!」
トマが初めて笑顔を見せた。その顔といったら、クルクルとした二重の目は、瞳の色素は薄く黄金色に透き通っている。泣きすぎて真っ赤になった頬とすっと伸びた鼻筋、桜色の唇がツヤツヤとしている。
そんな可愛らしい顔にかかる髪の毛は綺麗で柔らかそうな金髪である。
お兄さんは不覚にもぐらっときてしまった。
「そういえば名前を名乗ってなかったね、僕は名取 隼斗(なとり はやと)だよ。よろしくね!えっとー…トマ君住むところ決まってるかな?もし行くところないなら、僕の家に住むかい?」
「な、なにから何までお世話になってしまって…すみません…」
「僕が手伝いたいんだから、気にしないでよ!」
爽やかな笑顔を浮かべたお兄さん。その顔は、高く通った鼻、切れ長で奥二重の瞳。キリッとした眉や、少し薄目の唇。どこからどう見ても完璧にイケメンだった。
そんな端正な顔に黒髪で少し短めの髪の毛が揺れる。
トマは淫魔なのにも関わらず、ドキッとしてしまった。
そんなこんなで、おかしな同棲生活が始まろうとしている…。
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