アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
4
-
藍川さんがちゃんと寝室に入ったのを確認して肩の力を抜く。
…テレビで見たまんまの人だ。
天才作家 藍川。
藍川、っていうのはペンネームで本名じゃないらしいけどこの家には表札すらなかったから今も俺は本名を知らない。
藍川さんの専属アシスタントになれ、と命じられたのは少し前の社内会議の時。
全く新刊を出さない藍川さんに痺れを切らした上司からの提案だった。
俺としては大好きな作家の傍にいられるのは光栄なことでこんなにも幸せな仕事はない。
ただ。
「…予想外だな。」
テレビや雑誌で見たイメージだと繊細でどちらかと言うと潔癖にすら見えた。
実際こうして会ってみると案外ガサツなところもあるのかもしれない。
床に落いたままの飲みかけのペットボトルを拾い上げてゴミ袋へ突っ込む。
かなり広い部屋は荒れ放題であちこちにゴミや脱いだ服が落ちている。
特に酷いのは新聞や雑誌、本や広告。
作家だからやっぱり文字を読むのが好きなのかもしれない。
そう思って置いてあった雑誌を拾い集める。
"元天才作家 藍川 薬物依存で人生崩壊"
"作家藍川 隠し子発見"
"天才作家A 本を捨て夜の街へ"
どの表紙も、全て藍川さんへの誹謗中傷のものばかりだ。
どうしてこんな物をわざわざ持ってるんだ…?
もう捨ててしまおう、と表紙に触れた時所々萎れているのに気がついた。
注意してみると丸くインクの滲んだ跡がある。
「…泣いてたんだ。」
それは涙の跡で。
1人きり、この荒れた部屋の中で涙を流す藍川さんが脳裏に浮かんだ。
俺が 絶対に、救ってみせる。、
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
4 / 208