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無駄に大きい冷蔵庫の中から消費期限の切れたものだけを引っ張り出していく。
…はずだった。
「藍川さん、水しか残らなかったんですけど。」
「あはは…」
冷蔵庫に入ってたものは何もかも消費期限で中にはカビたものやどう見ても腐ってるものさえあった。
…この人、思った以上に重症かもしれない。
それより気になったのは全て1口だけ食べたものやほんの少ししか使ってないこと。
水以外の飲み物も開いているけれどほとんど口にしてないらしい。
「藍川さんってもしかして偏食家ですか?」
「え?そんなことないよ、基本的になんでも食べられるし…辛いのは苦手だけどね。」
「じゃあ何でこんなに腐らせちゃったんですか。」
「うーん…1口だけ食べたいんだけどね。ほんの少しだけでいいのに、どれもこれもたくさん入ってて。…また今度食べようって置いてたら忘れちゃうしこうなっちゃう。」
「へぇ…これからは気をつけてくださいよ。捨てるぐらいなら俺が食べるんで。」
「本当!?嬉しいなぁ。何を買おうかなぁ…」
「少しは反省してくださいってば…!」
カウンターに肘をついたまま「ごめんね」と藍川さんが笑う。
きっと一人にしちゃいけないタイプの人なんだろうな。
…にしても、これじゃ味噌汁は作れないな。
一応持ってきたものはあるからそれで一食分は作れるけれど。
「とりあえず、飯作りますね。味噌汁は諦めてください。」
「はい。人の手料理食べるの久しぶりだから嬉しいなぁ。」
「普段はカップ麺とかですか?」
「うん。後は冷凍食品とか。美味しいよ、特に炒飯はオススメ。」
「炒飯もラーメンも俺が作るんであんまり食べないでくださいよ、体に悪いんで。」
「あはは、家政婦さんみたいだ。実質、体を壊しやすいのはそのせいもあるからね、これからは小波くんの言う通りにするよ。」
聞き分けよくそう言うとカウンターに腕を乗せ突っ伏してしまう。
さっき眠れてなかったみたいだし、このままそっとしといた方が良さそうだ。
冷凍庫から持ってきた冷凍うどん、冷蔵庫からポツンと置かれた卵を取り出す。
本当はもう少し凝ったものを作りたいところだけどそもそもこんなに何も無いとは思ってなかったからろくな物を持ってきてない。
あるのはうどん、卵、出汁とネギくらいだ。
「なんか少しくらい、…」
そう思い台所の引き出しを開けていく。
使いかけのスパゲティの元、二年前に消費期限の切れた調味料達。
それから粉々になった海苔と大きな瓶に入った梅干し。
…と、1週間後に消費期限が切れる片栗粉。
「…なんとかなるか。」
シャツの袖を捲り直し焦げ跡の酷い鍋に水をはる。
さて、…作りますか。
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