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外に出てしばらく歩いたところでふと立ち止まった。
何か来た時よりも体が軽い気がする。
「…ジャケット忘れてきた。」
朝来た時は確かに着ていたジャケットがない。
掃除するために脱いで、確か部屋の隅に置いたままだ。
…取りに帰るか。
今来た道を戻っていく。
藍川さんに笑われてしまいそうだ。
ドアの前に立ってインターホンを一度押す。
…反応がない。
二回目を押してしばらく待っても何も応答はなかった。
この数分でどこかに行った可能性は少ない。
まさか倒れてるとかそんな事は無いよな…?
「藍川さん、聞こえますか?開けますよ??」
ドアを何度か叩いても応答はない。
仕方なく鍵を使って勝手に中へと上がり込んだ。
物音は聞こえない。
そっとリビングまで行くと、一人夕日を見上げる藍川さんの後ろ姿が見えた。
「はぁ、…倒れてるんじゃないかって心配しましたよ。いるなら返事くらいしてください。」
そう声をかけても返事が返ったこない。
ただ夕日を見上げているだけ。
心配になって斜め前から藍川さんの顔をのぞき込む。
全身に鳥肌が立った。
目を見開いて夕日を見上げたまま動かない。
まるで、なにかに魂だけ抜かれたみたいに。
その目は確かに夕日へ向いているはずなのに、焦点がどこにもあっていないように見える。
ハッとして慌てて藍川さんの肩をつかみ体を揺らす。
「藍川さん、しっかりしてください…!!」
「へ……?」
そんな間抜けな声の後に、ポカンとした藍川さんが俺を見た。
いつも通りの顔だ。
さっきの あのどこか恐ろしい目をした藍川さんはもう消えていた。
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