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夢を見た。
それは優しくて暖かい夢。
それなのに 夢の中にいるはずの今でさえその夢を思い出せはしない。
カクリ、と体が揺れたような気がして目が覚めた。
無理な体型をし続けると体が勝手に跳ね上がるらしい。
眩しい光に目を細めつつ、何とか目の前の何かを視界に入れる。
誰かが俯いている。
…いや、何かを見ている。
何かを読んでいる。
一度瞬きをしてもう一度目の前の何かを見つめてみる。
その何かは小波くんで、手に持っているものは俺の書いた本だ。
「……。」
小波くん、と言おうとして口を結ぶ。
今の小波くんには俺の姿は見えてないらしい。
ついでにその目には涙が浮かんでいて時々頬を伝っている。
…俺の本を読んで泣いている?
しばらく そのまま見ていた。
小波くんは最後のページまで読み終わると本をそっと閉じ、何故か大切そうに抱きしめた。
…それ、俺の本棚にあった本だよね。
そろそろこの体勢のままいるのも辛い。
少し息を吸って目の前の彼に声をかける。
「小波くん。」
「…、っ…!?」
「おはよう。」
「おはよう、ございます……」
「何読んでたの?」
「あ、すみません俺…勝手に、借りて…!」
急にあたふたしては抱きしめてた本を片手に持ち駆け足で本棚へと直してしまう。
なんだか激しい子だ。
「全然気にしなくていいのに。」
「すみません…起こしちゃまずいかなと思って、その…暇があるくらいなら本をと…」
「そっか。読んでくれてありがとう。んーよく寝た。お陰で元気になったよ。」
「それは良かったです…あ、もう昼過ぎですね。何か食べますか?」
「何かあるの?」
「ちゃんと味噌汁の材料買ってきましたよ。前、駄目だったんで。」
さっきまで泣いて、次にアタフタと走り出した小波くんは今は満面の笑みで味噌汁の話をしている。
なんだか喜怒哀楽の激しい子だな。
思わず笑い声が出てしまう。
「ふふ、…ありがとう。」
「はい…?とりあえずご飯作りますね。」
「うん。お願いします。」
こんな子が、物語の主人公なら。
きっと素敵な世界ができるんだろうな。
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