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揺れる人混みの中へ流されながら、知らない人の手を握る。
しまった、完全に小波くんとはぐれてしまった。
どうしよう。
「藍川さん、あの2ショ…」
「はい。うわぁ、猫だ。」
「いきますー、ハイチーズ。…ありがとうございます!」
「こちらこそ。」
「藍川さん次こっち!」
「え、っと…はい。」
次から次に向けられるレンズ。
知らない誰かの知らない手。
知らない声、知らない言葉。
目が回ってくる。
でもこうやって話しかけてもらえることも、目に止めてくれるのもすごく光栄なことだから。
断るなんて失礼なことはできない。
「なぁ。」
トン、と肩を叩かれて振り向くと金色の髪をした男の二人組がいた。
首をかしげ耳を傾けるとニーッと笑って俺の肩を抱いてくる。
「お前、まじで盗作してんの?」
「…え?」
「天才作家じゃなくて、"転載作家"って書いてたけどさぁ。」
「あはは…そんなことないよ。」
「まー盗作でもなんでもお前の本面白くないけどな!!」
笑い声が響いた。
盗作は してないよ。
本当に 本当だよ。
「藍川さんにそんな酷い事言わないで!」
「アンチはあっち行ってよ!」
交差する声に俺はただ、精一杯の笑顔を向けることしか出来ない。
あぁ また人に迷惑をかけている。
どうしよう。
どうしたら
「藍川さん!!!」
「…小波くん。」
「一旦引きましょう、こっちに…!」
「あ、っ…」
聞き慣れた声、見慣れた手に腕を引かれる。
無理矢理に人混みから連れ出されるとそのまま明るい道を走っていく。
後ろから聞こえるたくさんの声から耳を背けて、ただ小波君の声だけを聞いていた。
「すみません俺、離れてしまって…」
「ううん。助けてくれてありがとう。」
「怪我とか、…」
「大丈夫だよ。」
そこまで言うと会話が途切れる。
後ろから追ってきてる人はいないらしい。
それでも前から気付いた人が少しずつ近付いてくる。
「トイレ、っ…とりあえずトイレに行きましょ…!」
「…うん。」
大きな手に掴まれた腕はほんの少し痛い。
けれど、それよりもどこか暖かくて。
すごく安心した。
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