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確かに、これは藍川さんの書いたもので。
入れ替えられていたら気付けないかもしれない。
俺が好きなのは…藍川さんの作る話で。
それは…
「…ごめんね、少し困らせちゃったかな。」
「俺は、藍川さんの作る話の世界が好きで…その、藍川さんにしか書けない話というか…」
「さっきのも俺の作った話の世界だよ?」
「それは、…」
「あはは。そうだね。きみは優しいから。」
藍川さんが作文用紙を小さく折りたたむと床へ投げ捨ててしまう。
大きく伸びをしてソファへもたれると、俺を見つめては小さく呟いた。
「小波くん。俺がまた、本を書けばきみはもうここに来なくなるの?」
「…そうですね。」
「そっか。それは、すごく悲しいね。」
そう言って目を閉じる。
長い睫毛が小さく揺れた。
またその、冷たい唇に触れたい。
触れたい。
手が伸びて、藍川さんのすぐ側の床へつく。
体を伸ばしその小さな頬へ手を添えた。
もう戻れない。
何かがおかしい。
俺は この人のことを 知らない感情で見ている。
それはふとした瞬間に現れて、今の今まで平気だったのに急に理性を奪う。
息と息が触れそうな程近く。
「…駄目だよ。」
唇が触れる前、冷たい手が俺の唇へ触れた。
藍川さんの手が2人の唇の間に入り口付けを止める。
目を開くと、酷く悲しい目をした藍川さんが俺を見上げていた。
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