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最後のデータを打ち終え早々にパソコンを閉じる。
荷物を持ち、早足で上司の元へと向かった。
「あの、…藍川さんからなにか連絡ありましたか?」
「あ?いや相変わらず向こうからはないな。」
「そうですか…」
「気にするな。お疲れ、小波。」
「…お疲れ様です。」
上司へ頭を下げ会社を出る。
空には大きな夕日がある。
初めて藍川さんに出会った日。
忘れ物を取りに帰った先、目を見開いて夕日を見上げていた藍川さんの顔を思い出した。
あの人は きっと一人にしてはいけない。
一人でいるべきじゃない。
鞄を抱え走り出す。
会いに行かないと。
夕日が沈んだ頃、ようやく藍川さんの家の前へついた。
家の電気はついていないらしい。
インターホンを押しても相変わらず反応はない。
合鍵を鍵穴へ刺しゆっくりとドアノブを回す。
空気が重い。
目の前にはいくつもの茶色い封筒が落ちている。
…何かの冊子が入ってるのか?
冊子を拾い上げ玄関の棚の上へまとめて置くと、廊下の電気をつけ少しずつ廊下を進んでいく。
リビングの鍵を開けドアノブを回し前へ押す。
…が、開かない。
何度押してもなにかに突っかかって動かない。
「ん、…?」
もう一度、と力を込めた時小さな隙間から細い青白い手首が見えた。
「藍川さん…!?開けますよ、っ…」
ぐ、と力を込め無理矢理にドアを押し開く。
すぐにしゃがみ床へ横たわったままぐったりとした体を抱き抱えた。
青白い顔に紫の唇。
ぼんやりとした目はたしかに開いているけるど焦点が定まっていない。
どうして、この人はこんなに悲しいんだ。
「…藍川さん、しっかりしてください、…藍川さん!!」
虚ろな瞳が一度瞬きをすると、ぐるりと回って俺と目が合う。
そして乾いた唇がゆっくりと動きかすかな声で
「おはよう、小波くん。」
と言うと、重い瞼が閉じたまま腕の中で体が重くなりもう何も話さなかった。
ただ小さな呼吸音だけが微かに聞こえていた。
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