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持っていたフォークを皿に置いて背筋を伸ばす。
聞くなら今しかない。
「知りたい…です。」
「週刊誌に売ったり、マスコミに流すため?」
その声にビクリと体が揺れた。
聞いたことないような低い声。
体のずっと奥から出たような。
巻き終わったスパゲッティを口へ運ばずにずっとクルクルと回している。
「そんな風に、思ってたんですか…?」
「…いや。今のは俺が悪かったね。そんな理由じゃないと俺のこと知りたいだなんて思わないでしょ?」
「俺は、ただ藍川さんのことが知りたくて。…好きだから知りたいんです。」
「そう。」
藍川さんはそう言うとフォークから手を離して顔を上げた。
悲しそうな、辛そうな顔だ。
じっと俺を見ると少し首をかしげ
「俺なら…知らない人のこと、好きになれないよ。」
と言っては目を伏せる。
"俺の知らない"藍川さんだ。
明るく笑う藍川さんじゃなくて俺の知らない色んなものを抱えて詰め込んだ藍川さんだ。
「でも、俺は…」
「もし俺がすごく悪い人で。今まで小波くんを騙してたらどうする?今から殺しちゃうぞって言ったら?…ううん。これじゃ、またきみを困らせようとしてるみたいだね。」
「藍川さんは俺に好かれるのは迷惑ですか…?」
「…迷惑なのかわからない。昨日も言ったけど好きとかそういうのはわからないんだ。好かれるのも好きでいるのも得意じゃない。
それに俺は、君に好かれるような人間じゃないよ。」
「それは俺が決めることじゃないんですか…!?」
思わず声を張り上げてしまう。
藍川さんが怯えたような目で俺を見上げた。
…違う、俺はこんな事がしたかったんじゃない。
ただ伝えたかったんだ。
俺は貴方が好きで、貴方のことをもっと知りたいだけなんだと。
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