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藍川さんは怯えた目のまま口元を隠すように手の甲を口へ当てると目を逸らして弱々しい声で言った。
「…きみは俺のどこが好きなの?俺のどこを知っていて、それでどうして好きになったの…?」
「貴方と過ごしている時間が、その…表情や言動が…全部、全部好きです。」
「そっか。でもね…きみが見てる俺は綺麗なところだけだよ。」
「そんな…貴方の全てを見せてください…きっと、どんな藍川さんだって俺は…」
何を言っているのかわからなくなる。
必死に言葉を探していると目の前のその人は一度目を閉じては、ふぅと息を吐いて俺を見つめた。
「…小波くん。」
そう俺の名前を呼ぶと優しく笑った。
優しく笑うのに、その目は少し濡れている。
ゴクリと唾を飲む。
「俺は、きみに嫌われたくはないし嫌いたくもないんだ。」
「…嫌う、なんて……」
「あはは。この話はやめにしよう。きみの知りたい、と俺の知られたくない、がぶつかるだけだよ。」
そう無理矢理に笑うと冷め始めたスパゲッティを頬張って「美味しいね」なんて明るく言った。
傷つけたかったわけじゃない。
困らせたかったわけじゃない。
俺は、ただ……
…あぁ。
ただ 俺の我儘を押し付けただけだった。
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