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悪戯
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服を着替えた後、藍川さんに見送られ玄関までくる。
棚の上には積み上げられた封筒。
すっかり聞くのを忘れていた。
「そうだ、…藍川さん。これって何なんですか?」
「え?…あー…うん、…なんだろうね。」
「え"。わからないんですか…?」
「いや、ううん…分かるんだけど。わかるよ、すごくわかってる。」
バツが悪そうに顔をそらすと片手で口元を隠す。
…藍川さんがなにか都合が悪い時にする仕草だ。
どうするか、ととりあえず一冊冊子を手に取る。
「ただの封筒ですね。封はされてない…と。」
「そうだね。気にしなくていいんじゃないかな…?」
「確かリビングにもいくつかありましたよね。…そういえば、俺が初めて来た時も前来てた時も封の空いたこの封筒があったと思うんですけど、…?」
「んん、…観察力がすごいね。ほら、えーっと…教材、みたいな…」
藍川さんはそう言って何かを隠して誤魔化そうとする。
絶対にそんなものじゃない。
実際、この封筒は明らかにおかしい。
「でもこれ住所も宛先も書いてません。ってことは、誰かがここまで来て入れた…ってことですよね?」
「…小波くん、それ俺もらうから。気にしないで。」
「そう、…ですか。」
知られたくないものなのかもしれない。
藍川さんの差し出した手へ持っていた封筒を渡す、が すり抜けて床へ落ちてしまう。
落ちた拍子に中に入っていた"何か"が滑り出るように姿を見せた。
「あ、すみませ…ん、……?」
「…っ大丈夫、…大丈夫だよ。」
落ちたソレを俺が拾うより先に藍川さんが隠すように抱き寄せた。
藍川さんの手が届くより先。
確かにソレがなにか見えてしまった。
「藍川さん、…それ……っ」
「…なんでもないよ。」
「貸してください。」
「俺の、だから。」
「違いますよね?…これ、…っ」
慌てて積み上げてあった封筒へ向き直り一番上の物の中を見る。
中に入っているのは週刊誌。
表紙には
『天才作家藍川 転落人生』
という大きな見出しがあった。
呆然として藍川さんへ目線を向ける。
週刊誌を抱きしめた藍川さんは俯いたまま何も言わなかった。
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