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何もかも 理不尽すぎる。
その時の藍川さんのことはきちんとはわからない。
けれど、聞いているだけだと弱い立場の藍川さんを一方的に傷つけているだけに聞こえる。
貴方をどうか救いたい。
傷ついてボロボロになってしまった貴方を幸せにしたい。
「…小波くん、苦しいよ。」
「俺は…貴方を救えないんですね。」
「どうだろう。」
「せめて貴方を肯定したい、貴方は悪くなかったって言いたい。…今更遅いけど、それでも貴方を少しでも救いたい…っ」
「俺にとって君がいてくれることが今の救いだよ。」
そう言って藍川さんが腕の中で笑った。
いつか吉田さんが言ってた言葉。
"極端に愛情に飢えてる"
それは小さな頃から愛されていなかったから。
幸せを、愛を知らないんじゃないか。
「藍川さん、藍川さんは…昔の事…話すのは辛いですか…?」
「…わからない。でも君が知って得をするような話はないよ。つまらない退屈な話しかない。」
「退屈な話、聞かせてください…そしたら、…貴方が望む通りに愛せると、思うんです…っ」
「愛…?」
「藍川さんの過去は変えられないけど、藍川さんの過去は消えないけど…でも塗り替えて癒すことは少しくらいできると思うんです。…だから。」
「…そう、なのかな。」
抱きしめていた腕の中から藍川さんは抜け出すと辛そうな目で俺を見た。
もし貴方の事をもっと知れたら。
貴方が"好きがわからない"理由も
貴方が"夜、怖くて眠れない"理由も
貴方が"愛情に飢えてる"理由も
何もかもきっとわかるから。
「でも、…君にきっと失望されちゃう。俺は悪い人間だよ。」
「…そんな、…」
「そんなことあるんだよ。」
「俺から見える藍川さんは少しも悪いところなんてない…から、…」
「…だから。」
藍川さんが俺の両手を握ると俯いて苦しそうな声で
「綺麗なとこしか見せてないって、…言ったよね。」
と言った。
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