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「キス、してもいいですか。」
小波くんの声に俯いたまま頷く。
君を拒否することなく受け入れれば。
…君を、好きになれば。
君はきっとこれ以上俺を求めずに済むだろう。
でも彼はそれを望まない。
「……ん、…っ」
顔を上へ向けられ、触れるだけのキスを受け入れる。
温かくて優しいキス。
俺の唇を全て覆っては何もかも塗り替えるキス。
優しくて 甘い。
「抱きしめてもいいですか。」
同じように頷く。
大きな腕に抱きしめられて、小波くんに包まれる。
安心するような優しい香り。
君に少しずつ染められていく。
染められていくのは少し怖い。
「…帰ろう。」
「どこへですか?」
「作家とアシスタントに。」
「…はい。」
「小波くん、君の腕の中は気持ちがいいね。」
「俺も…すごく、気持ちがいいです。」
これで終わり これが終わり。
帰るところがあるんだから。
「小波くん、またね。また、月曜日。」
「…また月曜日。」
離れていく小波くんを見つめて笑ってみせる。
頬まで赤くてうぶな笑顔。
大人ぶったって俺より年下。
「ちゃんと寝てくださいよ。」
「もちろん。」
「ご飯も食べてください。」
「わかりました。」
「でも。…何かあったらいつでも頼ってください。」
彼はそう言って恥ずかしそうに目を背けた。
俺はただ呆然としてその顔を見ては笑いがこぼれてしまう。
また怒られちゃうかな、なんて思いながらも笑いが止まらない。
「なんで笑うんですか…!」
「ふふ、…っ照れるなら言わなかったらいいのに…」
「っ、…あー帰ります!!帰ります…!また月曜日に…!」
「はい、またね。」
慌てて荷物を持って立ちあがる小波くんへ手を振る。
パタン、とリビングの扉が閉じて遠くで玄関の扉が閉じる音がした。
スゥ、と部屋の空気が落ちていく。
「…ん。」
また ひとりきり。
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