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水道水を飲み終え、咳払いをすると吉田さんが真面目な顔で藍川さんへ向き直る。
俺はただソファに座る2人を下から見上げるだけだ。
「で、本題だ。」
「なんでしょう。」
「…二人になれる場所はないか?」
「ここで話したらまずいことですか?できれば、…二人は避けてください。」
「うちの可愛い部下にはあまり聞かれたくないようなことだ。わかるか?」
「可愛い部下に隠し事は良くないですよ。あまり…今、体調が良くないんですよ。」
藍川さんが俺を気遣うように小さく言うと吉田さんは困ったように目を閉じてため息をついた。
…きっと俺にはわからない話だ。
二人にしかわからない、秘密の話。
「何かあったか。」
「何かってほどじゃないです。少し、昔に戻ったというか。そんな感じです。」
「なるほどな。俺もお前の保護者のひとりだ。何があったらならすぐに報告しろ。」
「以後気をつけます。俺は…大切な商売道具ですもんね。」
「っははは、その通りだな。今は故障中だが治ればまたいい稼ぎ頭になる。俺はその代表管理者だ。そして、小波は修理師だ。資格はないがな。」
豪快に吉田さんが笑うと藍川さんの頭をガシガシと撫でる。
迷惑そうな顔をしつつも少し楽しげに笑う藍川さんは俺が見たことのない顔をしていた。
…商売道具、故障中、管理者に修理師。
藍川さんはまるでものみたいな扱いだ。
「スクラップになってくれるなよ。」
「…努力はしてるんですけどね。」
はぁ、とため息をつくとソファへ体を預け藍川さんが目を閉じる。
「それで」
と切り出し、真面目な真っ直ぐな目を吉田さんへ向けた。
「本題はなんですか?」
俺の知らない
仕事をする、大人の目をしていた。
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