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倒れ込んだ藍川さんの体を覗き込んで息を呑む。
……寝てるだけか、これ。
「心配すんな、ただの電池切れだ。」
「電池切れ…?」
「前もよくあった。バーっと書いて体力使って死んだように寝んだよコレ。あぁ、あと瞬きと息忘れるから書き出したら定期的に声かけてやれ。」
「…確かに。息、…はあんまり心当たりないですけど瞬きはよく忘れますよね。」
「お、見たことあるか?」
そう言われて今までのことを思い出す。
目を見開いたままどこかを見つめる姿を見たのは一度や二度じゃない。
それが藍川さんの"悪い癖"なら近くにいる誰かが注意するのが確かに一番いい。
「何度か見ました。」
「気持ち悪い上におっそろしい顔してるだろ。」
「…いや、…えぇと…怖い、ですね。」
「まーまともな生き方してねぇとこうなるってこった。生き物ってのは誰かのマネして生きてるからな。」
「はい……?」
「あ?だーから、コイツはマネする相手がいないまま生きてきたってことだよ。生まれた時から手本がいなかったんだ。」
「それ……!!」
「…あ"。」
俺の知らない過去の藍川さんの話だ。
なんとしても、今、ここで問いただすしかない。
藍川さんに聞いても教えてもらえない話なんだから。
バツが悪そうに顔をしかめる吉田さんへ身を乗り出しずい、と問い詰める。
「教えてください。」
「…少しだけな。」
大きなため息をついては藍川さんへ向かって「許せよ」なんて言う吉田さんへ何度も頷く。
これで少しは 貴方を知れる。
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