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藍色の憂鬱
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ガタンガタン、と外から何かが揺れる音が聞こえた。
僕は1人きりで茶色の扉を見つめる。
「……ん。」
手足が冷たくて 痛いも痒いもなくて。
僕はどうしてここにいるのかなぁ、なんてそんなこと考えてたり。
空が明るくなったらママが帰ってきてくれるから。
そしたら きっとママが優しくしてくれるから。
僕はねずーっといい子でいるんだよ。
ここから動かないの。
泣かないで 何もしないで 此処で待ってるの。
ずっと経ってから。
少しずつお外が明るくなって大きな光が空に上る。
ガチャ、と音がして目の前の扉がゆっくりと開く。
それから お姫様になったママが怖い顔で僕を見下ろすの。
「…ママ。」
「秋、あっち行って。」
「…ぅ?」
「あっち行けって言ってんだろ、殺すぞ…!!」
「っ、ぅ…ぁ、……っ」
怖くて 怖くて
頑張って手足を動かして部屋の隅っこに行く。
お姫様のママが大きな声を出したら、隅っこに行くの。
たまに たまにね。
優しいときだってあるんだよ。
ママがいないと 僕は死んじゃうから。
ママは 大好き。
俺が生まれた家は小さなアパートだった。
近くに線路があって、電車が通る度に家はガタガタと揺れた。
生まれた頃から父親はいなくて母親に育てられた。
育てられた、と言っても夜は仕事に行き朝昼は家で寝ているか知らない男が家へ上がり込んで性行為をするくらいの環境だった。
もちろん 小さい頃はそんな事何も理解してなかったけれど。
食べ物もろくに食べたことなかった。
それに、ある時が来るまで家から出たことは一度もなかった。
ただ 時々開く扉の向こう、灰色の壁だけを知っていた。
後は酷い匂いのする汚い部屋で生きていた。
***
秋(シュウ
藍川さんの本当の下の名前。
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