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たくさんたくさん走った。
足が痛くて、寒くて、体が動かなくて。
飛び出した外の部屋は大きくて上は高くて青かった。
ここが外?
たくさん部屋があってどれが正解かわからない。
走る大きな物や知らない人がたくさん。
どこ?なに?わからない
知らない、僕こんなの見たことない。
「ぅ、…っ…」
「春、大丈夫だよ。…僕が守る、から。」
あっちこっち走ってママから逃げるの。
だって 怖いから 怖くて痛いから。
逃げても逃げても終わりはなくてもう走れなくなっちゃう。
目の前には他よりも少し大きなお家。
もう僕の足は動かなくて、倒れるみたいにそこに座り込む。
…もう怖い。
このまま死んじゃってもいいの。
僕はいいの。
だから、春だけ守ってあげて。
もう 何にもいらないから。
目を閉じて春を抱きしめて。
僕は 誰にも抱きしめてもらったこと、無かったなぁ。
だから春のことは たくさんたくさん 抱きしめてあげれてよかった。
「君、しっかりして。…誰か、毛布を持ってこい!しっかりしろ、…もう大丈夫だからな。」
「……ぅ、…ん……」
さよならしようとした時。
誰か知らない人の声が聞こえた。
お願い もう痛いのは怖いよ。
春に怖いことしないで。
お願い。
そうやって 僕は深く眠った。
外をずっと走ってた。
逃げないと、母親に殺されるような気がしたから。
生まれてこの方外なんて出てことなくてね。
車も信号も、それから母親と弟以外の人間も初めて見た。
何もわからないまま見たことないものだらけで頭が壊れそうになりながらあちこち走り回ってたんだ。
どこに逃げたらいいのかもわからないのにね。
春の息はどんどん浅くなっていくし、俺だって服も靴もないからどんどん冷たくなって。
あー死ぬのかなぁ、って子供ながらにわかってた。
ううん、死にたかったのかも。
この先頼る先もなかったから、弟だけ誰か救ってくれて俺は死ねるのが一番幸せだった。
わかってたんだ。
俺、望まれてない子供だったんだろうって。
一つだけ大きな建物があったんだ。
それがこれからお世話になる孤児院だったんだけど。
あの時、もし。
ほかの建物の前に倒れたりしてたらどんな未来があったんだろうね。
気付かれないまま死んでたかもしれないし、母親に連れ帰られてたかもしれないし。
幸せに 生きてたかもしれない。
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