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*関連イラストにて藍川さんのビジュを公開しました
ふわふわの中で目が覚める。
上は白くて僕の周りは明るかった。
ここはどこ?
いつもの冷たい床じゃなくて、暖かいふわふわに包まれて。
…でも、傍に春はいない。
「おはよう。よかった、意識が戻って。」
「ひ、っ……」
慌てて起き上がった所に知らない人が近付いてくる。
僕より、ママより大きい人。
その人は僕の頭に手を乗せると優しく撫でてくれる。
…こわくない?
「君の名前は?」
僕の名前。
…言ったら、ママに見つかっちゃう。
僕は何も言わずに首を振った。
「それじゃ、あの子の名前は?」
指さした先には春が眠っていた。
春、生きてた。
嬉しくて思わず名前を呼びそうになって首を振る。
春だって言ったら見つかっちゃう。
「名前、わからない?」
「ん、…っ」
「そっか。ママとパパは?」
「…ううん。」
「そっか。怖かったね、もう大丈夫だよ。」
その人は優しく笑ってまた僕の頭を撫でてくれる。
優しい人。
こわくない。
嬉しくて嬉しくて目が熱くなる。
もう、怖くないんだ。
ポタポタと目から水が流れるとその人がそれを拭って優しく笑った。
「ここにいる人達のことは皆、先生って呼ぶんだよ。」
「…せんせい。」
「そう。でも、君たちの名前が無いと不便だね。先生がつけてもいい?」
言葉の意味はよく分からないけど僕は頷いた。
僕は秋、じゃなくなるのかな?
せんせい はキョロキョロと周りを見回すと僕の手を握った。
「ここに、書くよ。」
「…かく?」
「うん。まず、君の弟の名前はね。」
せんせい の指が僕の手のひらに触れる。
そして何度か動かすとそれを指さして
「あい だよ。」
と言って笑った。
春は今日からあいになるんだ。
「君の名前はね」
先生の指が、また動く。
何をしてるのかな。
僕がまだわからないことかな。
先生の指が止まると先生はニッコリと笑って
「君は今日から、ういだよ。」
と言って笑った。
目覚めたのは、孤児院の中の保健室だった。
生まれて初めてふわふわの布団で寝たんだ。
出会った先生は優しくて俺のことを何度も撫でてくれて笑ってくれた。
母親しか知らなかったから、驚いたよ。
でも…すごく、暖かかったのを覚えてる。
名前を言ったら母親に見つかる、なんてことあの時でも思ってたみたいで。
俺は頑なに名前を言わなかった。
あの人はそれ以上深くは聞いてこなくて新しい名前をくれたんだ。
俺の名前は 憂と書いてうい。
弟の名前は 藍と書いてあい。
平仮名にすると あいう しか使わない、簡単な名前だった。
俺と弟はそれからその孤児院でお世話になることになるだけど。
…あはは、ここからまた色んなことがあったんだ。
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