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それから何日か、僕も藍も違う部屋で過ごした。
先生は僕に「2人は病気だからしばらくは大人しくしなきゃダメなんだよ。」としか教えてくれなかった。
僕のいたお部屋は真っ白で、大きな窓があって外には大きな部屋が広がっていた。
上は青くて周りは上と違う色。
僕の知らない色。
見たことのないものばっかりで周りを見てるだけで全然退屈しなかった。
そんなある日、先生が僕に
「今日は質問をする日だよ」 と言った。
僕は先生に連れられて、色んな色のある部屋に行く。
その部屋は下も上も右も左も色んな色。
…目が回っちゃいそう。
「それじゃ、わかる事だけでいいから答えてね。」
「…ん。」
「君の名前は?」
「憂。」
「そうだね、そしたら…君の歳は?」
「とし…?」
「何才かな。」
「…5さい。」
「そうなんだね、ちゃんと答えられてえらいよ。」
僕はその言葉に頷いた。
先生はまだまだ質問を続ける。
「藍くんは何歳?」 「まだ0歳…かなぁ。」
「ママとパパはずっといない?」
「…ううん。」
「いつからお別れしたの?」
「…ううん。」
「言いたくない?わからない?」
「…ん。」 「そっか。」
「前はどんなところにいた?」 「お部屋。」
「どんなお部屋?」 「小さくてくらい。」
「1人?」 「…うん。し……藍、が…来るまで。」
「うんうん。それじゃ好きな食べ物は?」
「お腹が、キュッてならないの。」
「好きな物は?」 「…わかんない。」
「好きな色は?」 「…ううん。」
「お友達はいる?」 「おともだち…?」
「大丈夫だよ。お外に出た事はある?」
「…ない。」
そこまで答えると先生はまた優しく僕の頭を撫でてくれる。
答えただけなのに。
すごく、優しく撫でてくれる。
大丈夫だよ、って何度も言ってくれるんだ。
「それじゃ、最後の質問。難しいけど頑張ってね。」
「…ん、…」
「藍くんはどんなところで生まれたかわかる?」
「うまれ、た…?」
「ええと…いつ、どうやって出会ったかな。」
「ママが…床に、置いた。」
「そっか。それからはどうやって一緒にいた?」
「泣いたら粉を溶かして飲ませるの。泣いたらね、紙のパンツ変えて…抱きしめて、大丈夫って…言うの。」
「それは、ママが?」
「ううん、…僕が。」
「そっか。藍くんはどんな風に動いた?」
「うごく…?」
「こうやったり、こうしたり…した?」
先生が手足を動かしたり、僕の手を握ったりする。
思い出してみても藍は今まで動いたりしたことは無かった。
今まで、1度も。
「…ううん。」
「そうだね。わかった、ありがとう。今日はこれで終わりだよ。」
「ん、…」
「ねぇ憂くん。」
先生は僕の頭を優しく撫でて
「憂くんも藍くんも少しだけお病気なんだ。でも、これからも頑張れる?」
「ん…!」
「じゃあ大丈夫だね。」
と言って優しく笑った。
その時は何のことかまだ分かってなかった。
後から考えれば、保護された弟がどれだけ悪い状態だったかわかる。
弟は未熟児な上、栄養不足に加え環境も悪かったせいで発育が遅れるどころか障害が残ってしまった。
本当はちゃんと栄養を与えて大切に育てれば大丈夫だったはずなのに。
そんな弟を俺は誰よりも大切に生きていくことになる。
俺を生かしてくれたのは弟だから、弟を守るのは俺しかいなかったから。
でも
皆 いつまでも優しいままいてくれるはずなかったんだ。
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