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藍は毎日色んなものを教えてくれた。
黄色い小さな花は時間が経つと白いふわふわになる。
お花っていうのは顔にある鼻じゃなくて可愛くて綺麗なものってこと。
僕達が話している言葉には文字って言うものがあって紙に書くことができるってこと。
りんごもにんじんも全部、ご飯になる前は土の中にあったり木の上にあったりすること。
土って言うのは外に出たら下に沢山あること。
色んな事。
僕の知らない、いろんな事。
全部知らない僕は先生の言う通り馬鹿だと思った。
「あ、お兄ちゃん。僕のカバンの中に入ってるね、本取って!」
「本?」
「青い四角いの。」
「…これ?」
「うん!それ、えほん!」
「えほん?」
出てきたのは紙が一つになった物。
僕はそれを持って藍のところまで戻る。
愛に見えるように1枚目の紙を開く。
「一寸法師って書いてあるんだよ。」
「いっすんぼうし?」
「えっと…これがう、でこれがい。お兄ちゃんの名前は"うい"って書くんだよ」
「うい…」
「うん!このお話はね、すっごく小さな人がね、たくさん頑張ってお姫様を助けるんだ!」
「…?」
「そういうお話なの。」
「そう、なんだ。」
難しくてよくわからない。
お話?
話す、…ってことかな?
藍に見せながらもう1枚紙を開く。
どんどん紙をめくっていくと絵が変わっていって場面が変わっていく。
これが、お話。
「…すごい。」
「うん!僕ね、えほん大好き。」
「僕も、今大好きになった。」
「それじゃあね、僕がお兄ちゃんのためにたくさん借りてくる!それでね、僕が読むからお兄ちゃんにめくってもらう!」
「うん。」
「えへへ、楽しみだなぁ。」
藍がニッコリと笑う。
僕も、笑い返そうとするけど上手く笑えない。
…どうしてだろう。
少し前までちゃんと笑えたのに。
「お兄ちゃん、今日は楽しそう。」
「…え?」
「ずっと悲しそうだったから。だから心配だったんだ。…でも安心した!」
「ごめんね。藍。」
「ううん!」
それから僕達はたくさんの絵本を読んだ。
僕は藍から文字を教えて貰って、少しずつ本を読めるようになった。
朝も昼も夜も前と同じだけやることがあって、悪いことをしたらお仕置きがあって。
でも夜寝るふりをしてこっそり読んだりもした。
初めて外の世界を知ったんだ。
楽しくて 楽しくて
明日も生きたいって 思えたんだ。
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