アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
19
-
「藍くんのお兄ちゃん。」
帰ろうとした時、知らない人に話しかけられる。
…誰だろう。
悪いことをしたのかもしれない、と身構えて頭を下げる。
「すみません、すぐに帰ります。」
「ううん。違うの。少し聞きたいことがあって。」
「…聞きたいこと?」
「うん。お兄ちゃん…ええと、名前聞いても大丈夫?」
「憂です。」
「憂くん。憂君は今何歳?フリースクールに行ってるんだよね?」
「11です。もうすぐ12です。フリースクールに行っています。」
「6年生か。そう…ね、本は好き?」
「本……好き、です。」
その人は優しくて、俺のことを怒らなかった。
質問されることにちゃんと答えられたからかな。
本が好き、と答えるとその人は手招きをする。
…早く帰らないと先生に怒られる。
「あの、早く…帰らないといけなくて。」
「私が手紙を書いてあげる。藍くんがお腹痛くなってそれに付き添ってたって。」
「…いいん、ですか?」
「うん。藍くんから憂くんが本を好きってこと聞いて話してみたかったの。ここには沢山本があるから。」
「沢山、…」
「全部で12000冊以上。」
「…いち、まんに…せん?」
わからなくてそう言うと、その人は立ち止まって振り返る。
さっきまでの笑顔じゃない顔で。
どうしよう
馬鹿だから 僕が馬鹿でわからないから 怒らせた。
「ごめんなさい、…っ…俺、馬鹿…で…ごめんなさい、…っ…」
「…謝らないでいいの。わからないことは、すぐに分かるようになるから。ね?」
「え、……」
「12000は、沢山ってこと。わからなくても本が全部教えてくれる。だから大丈夫。」
「怒らない、の…?」
「絶対に怒らないよ。」
不思議だった。
悪いことしたのに どうして怒らないの?
不思議で 嬉しくて 安心して
俺はその人が差し出した手を握った。
それから たくさんの本に出会った。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
119 / 208