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「憂くん。」
藍を送った帰り、玄関に入ると目の前に先生がいた。
俺は学校から借りてきた本を背中に隠して先生を見上げる。
「今日は遅かったね。」
「…藍が、…1時間目、体育で。その…着替えと、…体育館まで送ってた、から。」
「そっか。」
先生の手が俺の頭に触れてゆっくりと撫でる。
気持ち悪くて、怖い。
体が強ばって上を向いたまま首が動かない。
「嘘つくな。」
「っい"、……!?」
急に体が突き飛ばされて、背中から後ろへ倒れ込む。
先生の足がお腹を上から思い切り踏みつけて痛くて苦しくて息ができなくなる
「何してたのかな。」
「ぅ"、…っ」
「憂くん。先生、嘘はダメって教えたよね。」
「…は、……ぃ…」
「どうして嘘をついたの?嘘ついてるの先生わかるんだよ。」
「ごめ、んなさぃ…っもう、しない…しません、…っ」
言い切る前に頬を殴られる。
舌をかんで口の中が血の味で一杯になる。
先生の目が怖い、怒ってる。
俺が 悪い事をしたから?
本を読むのは 悪いことなの?
「どうして嘘をついたの?」
「…っ、…それ、は…」
「どうして嘘をついたの?」
「……ぁ……、…」
本を読みたかったから。
明日も、明後日も本を読みたいから。
もっといろんなことを知って賢くなって
それで
馬鹿じゃなくなりたいから。
「…それ、なに?」
「これは…っ…違、…」
「何が違うの?」
また頬を殴られる。
口の内側も外側もひりひりする。
でも、こんなに痛いのに苦しいのに前みたいに涙は出てこなかった。
強く なれたから?
「これ読んでたんだね。」
「…ごめ、んなさ…い…っ」
「明日からもう送り迎えはしなくていいよ。藍くんとは違う部屋で過ごすんだ。」
「嫌、だ…っ藍を取らない、で…っ…」
「黙れ。」
嫌だ、と先生の服を掴んだのと同時に取り上げられた本の角で頭を殴られる。
……あれ。
周りが暗くなっていく。
もう外には出られない
藍ともいられない
お話 まだ途中だったのに
空を飛ぶクジラがいつもより大きな声で鳴いた。
まだ 朝は来ていないのに。
藍がどうしたんだろうと空を見上げると、空いっぱいの星がキラキラと輝いた。
風が吹く度、クジラが空を泳ぐ度
キラキラと星が降ってくる。
それから どんな話にしようかな。
藍が1人でも笑っていられる話を 作りたい。
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