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…後は味がしみるまで置いとくだけだ。
魚は終わってから焼けばいいし、味噌汁ももう出来てる。
"机の上を完璧にセットしといてください"と藍川さんにお願いしてからもう30分は経ってるのにまだ報告がない。
手を洗いながらリビングの方を覗き込む。
「藍川さん?」
姿も返答もない。
リビングの方へ向かうと、ソフアの下で丸くなって眠る藍川さんがいた。
一瞬慌てるが気持ちよさそうな寝息にその焦りもすぐに無くなる。
「…寝てなかったのに無理してたんですか?」
そっと頭に手を置いて髪を撫でる。
別に、いつも通り俺は一人で作るから寝ててくれたって良かったのに。
俺に起こさせてくれたらよかったのに。
今日は何か特別な日だった?
「起きたらご飯にしましょう。」
いつも通り本棚から1冊本を借りて藍川さんの傍に座る。
随分遅い昼ごはんになりそうだけどそれもいつも通りだ。
何も見ずにとった本は確かに"藍川"と書いているけれどよく見ると俺が見たことのない本だった。
デビュー作から全部買っているはずなのに見たことない本があるはずない。
…雑誌の懸賞か何かで本を出していたことがあったか…?
表紙も背表紙も何も書いていないその本は何故か他の本よりも少し汚れていて端が折れていた。
何故か読んではいけないような気がする。
でも、ずっと藍川さんの新しい本を読んでいないから少しでもいいから話が読みたい。
少しだけ。 少しだけ。
そっと本を開く
『空飛ぶクジラ』
蒼い宙に彼はいた。
彼は街を見下ろし今日も宙を守る。彼は言う「良い日になれ」と。僕らの宙の噺をしよう。
クジラは朝になると一際大きな声で鳴
俺は慌てて本をとじた。
それはいつも通り、藍川さんらしい文で綺麗で優しい話だ。
少し違うのは藍川さんの本の中でも児童本よりの書き方なことと
これは 弟へ捧げた話だってこと。
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