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冷たい床の上で転がっている。
あれ ここは古い記憶の中かな。
「憂くん。どうして君はそんなに馬鹿なのかな。」
その声に後ろを振り向く。
目の先には、にっこりと笑った先生がいて俺を見下ろしている。
どうしようか、と口を押さえた時今よりもずっと小さな手と口に気付く。
夢の中の俺はまだ子供らしい。
「…弟みたいに、歩けなくしてあげる。」
「ごめんなさい…、先生。」
「謝る暇があるなら人間らしくなる努力をしたらどうかな。」
先生の手にあるのは大きなハサミ。
俺はこの光景を覚えている。
それは確かに俺の中の記憶でデタラメなんかじゃない。
俺の小さな腕は先生の大きな手に掴まれてあっという間に組み敷かれてしまう。
動けないままハサミは俺の足に近づいて足の爪を挟んだ。
嫌だ、それは 嫌だ。
「ぁ"、…っ助け、て……、!!」
「…っひ、…っは、…ぁ…はぁ、…っ…」、
恐怖から逃げるように夢から飛び起きる。
はぁはぁと呼吸が荒い。
片手で口元を押さえると、その手の大きさに初めて現実なんだと気付きようやく落ち着いた。
…嫌な夢を見た。
ふと横を見ると彼はいないし、確かに繋いだはずの手は空だ。
「藍川さん、すみません…起こしました?」
「…起きました。」
「おはようございま……、どうしたんですかその汗…!」
離れないでいてってあれほど言ったのに、と言いかけた口を結ぶ。
…そうじゃなくて。
「何でもないよ。サウナに入る夢見てたんだ。…暑かった。」
「…それは暑いですね。床暖房が直だったからですかね?」
「そうかも。」
それだけ答えてまた床へ体預ける。
眠っていたはずなのに酷い疲労感だ。
これだから怖い夢は嫌い。
「ご飯、もう出来ますよ。食べられそうですか?」
「うん。腹ペコだよ。」
「肉じゃがなんて時間のかかるもの頼むからですよ。もうすぐ持ってくるので起きててくださいね。」
「はい。」
指示通りに体を起こして机へ体を向ける。
この当たり前のやり取りを、会話を。
今は大袈裟なくらいに大切にしていたい。
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