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小波くんを家から半ば追い出すように送り、扉の鍵を閉めた。
そのまま扉の前へ座り込む。
これでよかったんだ。
これ以上、あのこと一緒にいたら俺は駄目になっちゃう。
好きで好きで あの子をダメにしてしまう。
「…俺だって、本当に好きだったよ。」
扉に縋るようにして小さくそう呟いた。
きっと扉の向こうにいる君には聞こえないんだろうね。
好きだから 好きになってしまったから。
もう傍には居られないんだ。
君と離れるために、君とお別れするために。
俺がたった一つだけ出来ることがある。
力なく立ち上がりリビングに置いたままの携帯を手に取る。
俺が まともな人間でいられるように。
もう出会えないあの子と唯一手をつなげる方法。
手を繋いで、もう出会わないで済む方法。
『藍川?どうした?』
「急にすみません、いくつかお願いがあります。
1つめは小波くんを僕の担当から外すこと、2つめは貴方の会社名義で本を出していただくこと、3つめは先日お話を聞いた冊子の方に載せて頂くことです。」
『…お前、書けるようになったのか?』
「まだ試してませんが、書く理由ができたので。…冊子の方、本当の規定文字数はいくつですか?」
『4000くらいだ。』
「…知っての通り、僕は短編が苦手なので新しく出す本のエピローグとして書かせてください。明日の正午までには書いて玄関へ置いておくので取りに来てください。
本の方は出来次第また連絡します。」
『あぁ、わかった。…藍川、水を飲んで椅子に座れ。話を聞かせろ。』
「…わかりました。」
話を続けて喉が渇いたのに気付く。
偉い人へあの子の話をして。
それであの子の事はもう忘れよう。
そんな 淡い思い出だったのだから。
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