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彼のいた部屋に別れを告げて廊下を歩いていく。
寝室の向こう、もう数年入っていなかった部屋の扉を開く。
埃っぽい匂いに薄暗いその部屋は完全に眠っている。
何も置いていない部屋にはただ一つだけ机がありその横の小さな棚には大量に買い置きしていた原稿用紙とボールペンが置かれている。
これだけで本が何冊もかけるくらいに。
「…ただいま。」
そう呟いて椅子に座る。
原稿用紙とペンを机へ置いて目を閉じる。
主人公は優しい好青年にしよう。
彼はまるで暗闇に落ちた世界に現れた光、救世主のよな青年。
世界は彼によって光を取り戻して生き返っていく。
そして…ラストはそう、彼を失う。
彼を失ってから世界は気付く。
彼の大切さに、彼の優しさに。
「…題名は、何にしよう。」
白い原稿用紙の右上へペン先をつけ目を閉じる。
物語に語りかけて
そう 俺の居場所はここだよ
『小さな光』
世界が闇に満ちた時。
一人の青年により 一筋の光が指すだろう。
そう 彼の名は……
書き終えた原稿用紙を紐で縛って玄関へ置き、水を飲もうとリビングへ戻る。
外はまだ夜らしくて光がない。
…まだ寝なくていいか。
寝ても寝なくてももう誰も俺に文句を言ったりしないんだから。
『藍川さん、お願いですから…夜に寝て朝に起きる生活してみません…?』
困った顔で、それでも少し笑いながらいつも言ってくれたあの子くらいしか俺にそう叱る人はいなかった。
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