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随分多くのことを話したような気がした。
周りが少しずつ収まっていくと、さっきの子が俺の前へ立ち
「本日はここまでです。これ以上の質問は受け付けません、みなさんありがとうございました。」
と大声でいい、マスコミさん達を追い払っていく。
俺はただぽかんとそれを見ながら首を傾げていた。
…そうだそうだ、いつもこんな感じだった。
やっと数年前のあの日々を思い出してきた。
それならきっとこの後は何人化に囲まれながらあの部屋に戻って慌ただしく次の説明をされるんだろう。
誰も、俺の目を見ないまま。
「藍川さん、こちらへ。」
「ありがとうございます。」
人の壁に覆われてエスコートされるみたいに奥へと連れ戻される。
そんなことしなくたって俺は逃げないし世界は襲ってきたりしないのに。
でもこれに慣れなくちゃ
またこれが日常になるから
あの子のいない代わりに
あのこの隙間を埋めるくらい慌ただしい日常が帰ってくるんだから。
「ね、お昼はあるの?」
「お弁当がありますよ。」
「うーん…うどん、…うどんが食べたいなぁ。卵とあんかけの。」
「それじゃ出前探してみますね。」
…そりゃ、私が作りますにはならないか。
出前のご飯もお弁当もたしかに美味しいんだけど違うんだ。
誰かの手料理が食べたいのに。
あれ 違う。
誰かの手料理じゃなくて、あの子のご飯が食べたいんだ。
そんなの駄目だ。
「…ううん、やっぱりお弁当ください。すごくご飯食べたくなった。」
「ふふ、やっぱり藍川さんは変わった方ですね。わかりました。」
「あはは。そうかなぁ…でもありがと。御世話様です。」
「いえ。」
その人は礼儀正しく頭を下げると俺を控え室へ見送った。
もう大丈夫。
本当に本当に大丈夫。
もう、忘れたし 思い出さない。
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