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「それじゃー本番いきます。3,2,1。」
その声に顔を上げて前を見る。
俺のお仕事は前を向いていることと、誰かに話しかけたら答えること。
芸能人の皆がお話してるのを相槌を打ちながら聞いていると急に名前を呼ばれる。
「藍川さんはどうですか?」
「うーん、僕の家はコタツがなくて…だからいつも床暖房の上で毛布にくるまってます。」
「ええ、コタツないんですか!?」
「あはは、買いたいんですけど何がいいかわからなくて…」
「そんな藍川さんのために!今日の特集はこの冬絶対にオススメのこたつ特集です。」
「わぁ、楽しみだね。」
適当に応えた言葉が次のコーナーへ繋がってくれたみたい。
…でも、コタツは本当に欲しいなぁ。
1人で入ったら寂しいかな。
なんて そんなことを考えながら前に置かれたモニターを見る。
それがお仕事。
これでもお仕事。
*
「お疲れ様でーす!」
「お疲れ様でした。」
一時間の収録で朝は終わり。
皆に頭を下げてすぐに外へ向かう。
この後は確か雑誌の撮影があったはず。
車がすぐに来てくれるって偉い人に言われたから指示された通りの駐車場へ向かう。
駐車場で一人、ぼーっと待っていると後ろから足音が聞こえてくる。
「藍川さーん!」
「うん…?おはようございます。」
「おはようございます。SNSでめちゃめちゃ話題になってますよ今日の藍川さん!」
「ええ?俺なにかしたかなぁ…」
「"透明感はんぱない!"とか"美人すぎる!"ですって。…確かに今日雰囲気違いますね?」
「あぁ、…えーっと…お砂糖系?にしてくれたんだって。」
「なるほど。いやー美人はいいですねぇ…」
「あはは、そんなことないよ。」
褒めてくれるのは嬉しいけど、この人誰だろう…?
笑顔でそんな話をしているとすぐ横にゆっくりと車が止まる。
…お迎えだ。
「あ、移動ですか?」
「うん。撮影だって。」
「それじゃ、俺はここで!お疲れ様でーす!」
「お疲れ様です。」
ひらひら手を振って走っていくその人を見送る。
姿が見えなくなってから振り向くと、ガラス越しに機嫌の悪そうな偉い人が見えた。
この人がお迎えなんて珍しいなぁ。
「どうしたんです?変な顔して。」
「あ?もう今、社内が修羅場なんだよ、逃げてきた。」
「ええ…何があったんですか。」
後部座席へ乗り込んでカバンを置き鏡越しに偉い人を見ると、大きなため息をついた。
「小波が今日から出勤だったんだ。もう大騒ぎで大変だ、お前のせいだぞ。」
「…小波くん。」
その名前に目を閉じる。
あぁもう
まだ忘れられてなかった。
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