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「それで、あの子がどうしたんですか?」
「お前の担当を外れたくないって駄々こねだ。あぁ、心配するな。アイツへの同情に負けるつもりは一切ない。
アイツは藍川の本に関われないならやめる、ってまだ言ってんだ。脳みそを疑う。」
「…そう、ですか。」
そこまでまさか言われるとは思わなかった。
でもここで中途半端になるのは良くない。
客観的に見ても俺とあの子は関わるべき人間じゃないんだ。
「お前はアイツを路頭に迷わせたい訳じゃないんだろ?」
「…むしろ逆です。あの子は僕のところなんかじゃなくてもっと輝ける場所がある。…だから。」
「本当にそれだけか?」
信号で止まるのと同時に、偉い人が後ろを振り向く。
俺は思わず息を止めたその目を見た。
いつものふざけたような口振りではなく芯のある声だ。
本当、は。
「…あの子は優しくて僕を変えてくれたから。僕はこんなだから、あまり人のためになれなかったけどあの子だけは僕を必要としてくれて…大切にしてくれようとした。
でも…そんなの駄目だから。そんなのに甘えたら、いつか失う日に耐えられないから。…それなら僕は今、忙しさや仕事を理由にあの子を忘れたい。
今なら 忘れられると思ったんです。」
「それが本心だな。」
「…すみません。仕事に私情を持ち込むのは良くないのはわかってます。でも、どうかお願いします。俺はもうあの子と関わりたくない。
あのこは眩しすぎて、輝きすぎて。
自分が 霞んで見えなくなってしまうから。」
あの子を忘れたい。
期待したくない。
あの子といると自分が見えなくなる。
ねえ この気持ちはなんだろう。
「わかった。小波は俺が説得する。お前は今まで通り、天才作家として仕事をこなせ。やることは全部やれ。死なない程度にな。
生きろよ。」
「はい。」
小波くん。
もうそろそろ 忘れさせてくれたっていいんだよ。
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