アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
8
-
朝、朝食を食べながらいつも通りテレビを見ていた。
画面の中の藍川さんは変わらず眠そうでウトウトと体を揺らしている。
…この人は、ちゃんと眠れてるだろうか。
ご飯は食べているか、片付けは出来ているか。
また前みたいに散らかった部屋の中で蹲ったりしてないだろうか。
『次のコーナーは?』
テレビの中から聞こえてくる声を聞き流しながら、トーストを食べおえ冷め始めたポタージュを流し込む。
その時。
画面の中、左上。
レギュラーメンバーが並んで座る中、一番端に座っていた藍川さんの体が前へ倒れた。
床へ蹲る藍川さんは動かない。
スタジオが騒然とする。
「藍川さん、…っ!?」
思わず声が漏れ、テレビの画面へ顔を近づける。
すぐに起き上がった藍川さんは顔を上げじっと目の前を見つめた。
その顔は、いつの日か夕日を見つめていた時と同じ。
見開いた目の先には何も見えていないようで。
『藍川さん、大丈夫ですか!?』
大丈夫じゃない。
駄目だ。
この人に、大丈夫なんて聞いちゃ駄目だ。
『…寝て、ました。』
『あははは、流石おねぼけ担当藍川さんですねー!』
『ちょっとーちびっ子に馬鹿にされちゃいますよ!』
『あはは、ごめんなさい…暖かくてウトウトしちゃって、…もう起きました。うん、多分。』
藍川さんはすぐ立ち上がるとそう取り繕い、両手を体の前で振って笑った。
スタジオ内も皆笑っていてスタッフの笑い声が聞こえる中CMへと移ってしまう。
大丈夫なんかじゃない。
この人は、大丈夫としか言えないんだ。
「…どうして、…こんなに遠いんだよ、…っ」
テレビの画面を殴りながらそう言うしか出来ない。
貴方の傍に行きたい。
貴方の傍で生きたい。
なのに
こんなにも 遠い。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
157 / 208