アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
10
-
今日はお迎えがない日。
行きも自分で来たから帰りも自分で帰らないといけない。
周りを小綺麗にして、それから鏡をのぞき込む。
うん。いつも通り。
廊下へ出てすれ違う人に会釈しながら駐車場へ向かう。
体調も戻ったし、そのお陰で眠気も飛んでいった。
これなら事故の心配も無さそう。
車を運転しながら、ふと気がついた。
そう言えば家に帰っても何ももう食べ物が無いんだっけ。
帰ってからスーパーにいかないと。
昼の空いた道を走って家へ車を止める。
今日もちゃんと安全運転で帰って来れました。
荷物をまとめていると、外から声が聞こえてくる。
「おかえりなさい。今日はもう仕事終わりですか?」
「ただいま。今日は終わりだよ。今からご飯買いに行くんだ。」
「それじゃ、俺は家の片付けしときますね。あ、冷凍食品ばっかり買っちゃダメですよ。」
「あはは、わかってるよ。」
そう言って窓を見上げると小波くんがクスクス笑いながら小さく会釈をした。
俺はそのまま手を振ると扉を開け車を降りる。
姿が消えるそんな彼も、見えないよりはマシかもしれない。
一人のんびりスーパーまで歩き、裏の扉から顔を出す。
「こんにちは。」
「お!藍川さん、今日は何が欲しいんだい?」
「うーん…お惣菜、一番美味しそうなのください。ご飯とおかず。…あ。あと、簡単に作れるお味噌汁ってありますか?」
「あぁ、あるある。待っててくれな。」
ちきんとお辞儀をして大人しくお店の人が帰ってくるのを待つ。
冷凍食品よりはいいと思うし、これで小波くんも心配しないはず。
「お待たせ。これお惣菜と、こっちがお味噌汁。鍋にお椀一杯分のお湯入れて後は他の入れればできるから。」
「それなら作れそうです。ありがとうございます。」
「いえいえ、またね。」
「はい。また。」
もう1度お辞儀をして受け取ったものを持って歩いていく。
少しずつ、俺が一人になっても平気になれば。
いつか君の声が聞こえなくなるんじゃないかな。
それまではもう少しだけ。
「ちゃんと袋の中身だけ入れるんですよ。」
「わかってるよ。」
「茹でちゃダメですからね?」
「あはは、本当に信用ないなぁ。」
傍にいなくたっていいから俺を支えていてください。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
159 / 208