アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
2
-
小波くんに言われた通り、要らないものをポイポイとゴミ袋へ放り込んでいく。
溢れたゴミは全然減らない上に、片付けが進むごとに嫌なものに触れて気分が乗らなくなってくる。
明日でもいいか。
なんて思う度に隣であの子が頑張ってください、なんて言うからやめられない。
しばらく、ただただ要らないものを捨て続けた。
そしたら発覚したこと。
この部屋にあるものはほぼゴミで俺はあの日から殆ど物を出していなかったこと。
要らないものを捨てるって大切だ。
「藍川さん。」
「うん?」
最後のゴミ袋を結んでいると、後ろから声が聞こえた。
掃除をしたのに、あの子はまだ消えてくれなかったみたい。
袋を結び終えて後ろを振り向くと彼は優しく笑った。
「小波くん?」
そう言って瞬きをした瞬間、彼は消えてしまった。
振り向いても左右を見てもいない。
もう少し話してくれたって良かったのに。
ゴミ袋を玄関へ運んで部屋の換気をして、洗い終わったお皿を棚へ直して部屋中を何もかも綺麗にしても彼は話しかけてくれなかった。
「綺麗になったよ。」
そう言っても声が床へ落ちるだけ。
「小波くん?いないの?」
何度話しかけたって、もうあの子は答えてはくれなかった。
あぁ 本 当 にいなくなっちゃったんだ。
なにもかも 捨ててしまったから?
「…ふふ、よかった。」
俺は目を閉じてクスクスと笑った。
一人きりの部屋で一人笑う姿はきっと不気味だろうな。
やっとお別れできた。
長かったな。
こんな事なら早く掃除をすればよかった。
そしたらもっと早くに一人になれたのに。
「さて、…貰い物整理しよう。」
そう呟いて偉い人から受け取ったファンレターとプレゼントの箱を開いた。
大きな箱には綺麗に封筒や葉書が詰められていて、その下にはまたこれも綺麗に箱や袋が詰められていた。
これを入れた人は相当几帳面なんだろうな。
俺はソファに座ってそれを一つ一つ開けていく。
優しい言葉ばかりのそれを見て酔いしれていく。
現実から 逃げるように。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
162 / 208