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どうして、ここに?
その人は後ろ手で玄関の鍵を締めチェーンをかけると靴を脱ぎゆっくりと俺の方へ向かってきた。
逃げないと。
そう思っているのに足がすくんで動けない。
捕まったら何をされるかわからない。
「憂くん。やっと二人きりで会えたね。」
「…ひ、っ……」
逃げないと
「憂くん?名前を呼ばれたら返事をするんだって教えたよね。」
「はい、…っ…」
逃げないと
「ちゃんとまた教えてあげないとね。」
逃げないと。
ベランダからなら逃げられるかもしれない。
前から迫ってくる先生から逃げるよう、後ろへ後ずさっていく。
早く動かないと、早く逃げないと。
それなのに体は上手く動いてくれなくて足はガクガクと震える。
リビングまできたところで、さっきのダンボールに躓いて後ろへ倒れ込んでしまう。
「あぁ、こんな所に置いてるからだよ。駄目だね?」
「ごめんなさ、い…っ…」
「…ほら。おいで?」
「嫌、だ…っこないで、こないで…っ…」
嫌だ 怖い。
ここから逃げられるなら、どんな手を使ったって。
逃げるように後ずさりながら視界の端に入った本棚を見る。
何だっていい、なんでもいい。
今さえ逃げられたら誰かのところへ逃げよう。
「憂く、…」
「…っう、…嫌、…嫌だ…っ!」
手を伸ばして引き抜いた本を何冊も先生へ投げつける。
俺の書いた本が空を舞ってぶち当たり床へ落ちる。
目が痛い 心が痛い。
「…憂くん、悪いことはしたらいけないって言ったよね?」
目の前
ポタポタと落ちる血を見ながら俺は震えて小さくなることしかもう出来なかった。
殺される
そう確信したから。
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