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助けて
そう口にした瞬間に、体が潰れそうなくらいの勢いで腹を強く殴られる。
1度、2度。
ごめなさい、助けてなんて嘘だから。
そんな我儘言ってない。
意味がわからないままに何かを叫んだ。
助けに来ないで、何もしないで。
何にもないから。
闇雲に言っていると、携帯が離れていった。
「…憂くん。」
「ぅ"、…っごめ、…んなさ…ぃ、っ…そんな、つもり…じゃ、…」
「それじゃ憂くんは意識しない間に悪い事しようとしたのかな?」
「そう、じゃ…」
「言い訳は駄目だって昔教えたよね?全部忘れたのかな?」
「っひ、…ごめん、なさ、いっ…殴ら、ないで…っ…」
「口答えするな。」
痛い。
お腹の感覚がなくなる。
口の中が酸っぱくて何か出てきそうな。
違うんです、あの人に助けて欲しいなんて言ったんじゃない。
苦しかったんです。
心臓が痛くて、今も痛くて。
だからどうしても助けて欲しくて。
だって 死んじゃうんじゃないかって思ったんです。
許して ごめんなさい
「憂くんが悪い事ばかり言うから口も塞ごうか。」
「…や、…嫌、…っ…死、ぬ…」
「さっき殺してって言ってたよね?君みたいな馬鹿は殺す価値はないけど…きっとそのまま生きてるより死んじゃう方がマシじゃないかな?ほら、その口閉じて。」
「っぅ"、…ひ、っぐ……、っ…」
涙がぼろぼろと出てくる。
口で息をするのも苦しいのに口を塞がれたらもう息もできないかもしれない。
俺は死んだ方がいい?
俺は どうして こんなに人を怒らすような悪いことばかりしてしまうんだろう。
「朝、また様子を見に来るね。」
「ん"、っぅ…、っ…」
口へ何重も貼られたテープはどう頑張っても剥がれてくれなかった。
目も見えない、耳も聞こえない。
ただ痛いくらいに動く心臓と痺れた手足の感覚だけを感じて。
もっと頭が良くて褒められるような人になりたかった。
俺は 大人になっても 駄目な人間なままだ。
眩しくてゆっくりと目を開く。
あれ?手も足も自由だ。
もう苦しくもない。
…死んじゃったのかな?
その割には場所は家のリビングのままだし、俺はいつも通りソファで眠っていたらしい。
「あれ、もう起きてました?おはようございます。」
「おはよう。」
「ご飯もうすぐ出来ますよ。」
「本当?楽しみだなぁ。」
よくわからないけれど、誰か男の子が俺の部屋にいる。
優しそうな子だ。
楽しそうな笑顔で台所へ戻って何か作ってくれてるみたい。
うーん、どこかで見た事があるけど思い出せない。
「藍川さん、今日はそっちで食べますか?」
「うん?…あーカウンターで食べようかなぁ。君はどうするの?」
「俺は洗い物しながら見ときます。」
「あはは、お昼くらい付き合ってくれたらいいのに。君はいつも謙虚だなぁ。」
「お互い様ですよ。」
俺はこの子をよく知っているみたい。
なのに、名前は思い出せない。
俺が死んでいてここがあの世ならこの子は天使か悪魔か…それか死神とか?
なんて言ったら怒りそうだなぁ。
「ね、ここは天国だったりする?」
「え?あんたなんかが天国に行けるわけないだろ。」
ドクン、と心臓が跳ねる音で目を開いた。
あぁ また死ねなかった。
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