アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
2
-
会社へついてすぐ、2人がかりで藍川さんを仮眠室まで運んだ。
ソファへ寝かせるとすぐに「外で待ってろ」と言われ、言われるままに廊下に出た。
防音の扉の向こうの音は何も聞こえなかった。
しばらくすると腕まくりをしたままの吉田さんが疲れた顔のまま出てきた。
「あの、…藍川さんは……?」
「…わからん。またぶっ壊れたかもしれないし、何も無いかもしれない。だが見たところ相当やばい事されてたみたいだな。」
「…相当…やばい、…」
「アイツが昔、施設で虐待されてたのは知ってるな?」
「聞きました。」
「あの"先生"は藍川に異常な程執着してる。性的に、な。見た目と身体にしか興味は無いが出来る事なら感情のない人形にしたいらしい。」
「そんな、の…っ」
思わず声を上げると吉田さんの手が俺の口を抑えた。
そして眉間にシワを寄せるとはぁ、と一つため息をつく。
「アイツが起きる。…そんなの許されない、当たり前だ。アイツら立派な人間だからな。だがもう手遅れだ。」
「どうして手遅れなんですか…?」
「愛も常識も何も知らない空っぽな藍川に教えられたのは自分が人より劣っている、頭が悪くて不器用、それにドジで物覚えが悪い"馬鹿"だって事だ。
それで生かされてきたアイツはどう育つ?そりゃ自分に自信が無い、随分薄幸で不憫な見た目だけの人間になるだろうな。」
「そんな言い方、やめてください…」
「それが事実だ。アイツは欠陥人間だ。俺がアイツに初めてあった時、アイツは首に縄の跡をつけて死にそうな顔で出てきた。俺を見て"殺されるんじゃないか"みたいな顔をしやがった。
なんでアイツがあれだけ書く才能に恵まれてるかわかるか?」
「…わかりません。」
なんで、と言われてもそれは才能だからじゃないのか?
才能に理由…?
わからないまま突っ立っていると吉田さんは俺を見てニヤリと一度笑った。
「アイツはそれしか知らなかったからだ。」
「…はい……?」
「あとは自分で考えろ。お前もアイツが死ぬほど馬鹿で知識が無いから、って答えになるだろう。…俺はもう帰る。あとは好きにしろ。」
「え、ぁ…ちょっと……!」
大切なことをちゃんと聞けてないのに、吉田さんはスタスタ廊下の方へ歩いていってしまう。
…なんなんだ?
階段を降りて姿が消えた吉田さんから目をそらし、クルリと後ろの扉へ向き直る。
今は、目の前にいる…この人のそばに居るべきだ。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
180 / 208