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目を開くと、そこは薄暗い部屋だった。
どこだろう。
ソファに寝かされているみたい。
体はギシギシと痛むけれど、自由に動かせるらしい。
それに前が見えて音が聞こえて口で息だってできる。
あぁ 生かされたんだ。
俺はぐ、と手を前に出して何度か掌を開いたり閉じたりを繰り返してみる。
確かに痛むけれど問題なく動いた。
けれど喉は焼けるように痛いし、心臓はまだ忙しく動いている。
目はなんだかしょぼしょぼしてよく周りが見えなかった。
そのまままた目を閉じる。
明るくなればもう少し見えるかもしれない。
そんなふうに楽観的にいると、少し向こうで扉の開く音がした。
先生かもしれない。
けれど、何故かもう恐怖心すらなかった。
「……起きてますか?」
知らない誰かの声だ。
俺はその声に何も答えない。
先生の声じゃなければ、無理して答える必要は無いから。
「貴方に嫌われても、一人にするべきじゃなかった。」
その人は苦しそうにそう言うと、優しく俺の体を抱いた。
優しく、優しく。
俺の体が潰れてしまわないように。
俺はそれに答えるように薄らと目を開いた。
ぼやけてよく見えない。
けれど、誰かがそこにいた。
「……ねぇ。」
「っ、起き…て、…」
「ごめんね。」
彼は俺を傷つける意思は無いらしいから、安心して声を出した。
彼は大袈裟に驚くと俺から離れていく。
この人は、知ってる人なのかな。
「…体、おかしな所は…ありませんか?」
「どうかな。あちこち上手く動かせないんだ。それに感覚もおかしい。」
「そう…ですか。でも、大丈夫です。すぐに良くなるって言ってました。」
「そっか、…よかった。」
一度目を閉じてもう一度開く。
けれど、目の前にいるはずの彼の顔を俺は認識出来なかった。
仕方なく手を前へ伸ばしその頬へ触れる。
暖かい 人間の肌に。
「ねぇ、見えないんだ」
「何がです?」
「きみが。…霞んで、見えない。」
触れている手に何か水が流れてくる。
これはなんだろう。
彼の涙かな。
どうして、君は泣いているの?
俺はわからず手を離し目を閉じた。
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