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会社を出て車に乗り込む。
時間はまだ7時過ぎだ。
今日は仕事は休みだから会社に誰も来ることは無い。
藍川を置いていくのは気が引けるがどうせ小波は帰らないだろう。
さっき、藍川の介抱をした時のことを思い出していた。
ヒューヒュー風の音みたいな呼吸をしながら「熱い熱い」なんて繰り返す姿は地獄でしかなかった。
着替えさせてやろうと脱がした服の下、見たくもなかったソレは確かにあの人の"性的対象"であることの証で。
俺はシャワーで藍川の体を流してやりながらどこか惨めで仕方なかった。
「…くそ、…ようやく人間らしくなってたのにな。」
煙草に火をつけて窓の向こうを見る。
向かいの大通りは車が合間なく走っていく。
誰も彼も、アイツみたいな苦しみを知らずに生きている真っ当な人間ばっかりだ。
腹が立つ。
煙草の灰を落としフゥと息を吐いた。
ふと、アイツと出会った日のことを思い出した。
痩せこけた姿は日本の格差社会の象徴みたいで俺ら気分が悪くなったのを覚えている。
怯えたように目を逸らしたあいつは声に出さずに口だけで
「ごめんなさい」
と何故か 呟いていた。
常識も知識もなかったアイツを半場無理やりあの施設から取り上げて、人間へ育てていくのは楽じゃなかった。
あぁ そんなあの日が懐かしい。
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