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ソイツはしばらく怯えたように俺を見ていたが、しばらくすると
「はじめまして。」
とだけ言った。
俺は思わず顔を顰めたが、横にいた女教師は優しげな声で話し始める。
「憂くん、覚えてない?学校でいつも藍くんや憂くんと一緒にいた…」
「ぇ、……っと…」
「覚えてないなら仕方ないね。今日は憂くんに大切なお話があってきたの。」
「…大切な、…?」
子供は終始怯えたように話し、女教師にそのまま言葉を聞き返した。
話を聞く限りコイツは今、学校に行ってないらしい。
「この人は、出版社の吉田さん。」
「…しゅっぱんしゃ、…」
「本を出している会社の偉い人なの。貴方の書いたお話をね、藍くんが私に見せてくれて。色んな会社に送って…やっと貴方を才能を認めてくれる方に出会えたの。」
「ごめんなさい…俺、あんまり…話すの、聞くの…得意じゃなくて。」
許してくれ、とでも言いたそうな顔に俺は首を振った。
一般教養すら受けていないのかもしれない。
だがそんなこと俺には関係ない。
俺が欲しいのはコイツが書く物語だ。
「書くのはどうだ。」
「…え?」
「書くのは得意じゃないのか。」
俺はじっと子供見てそう問いかける。
子供はしばらく何も言わないまま俺の目を死にそうな目で見つめ返してきた。
暫く考えたあと、子供は小さな声で
「…好きです。」
とだけ言った。
上等だ、気に入った。
「なら充分だ。今日からお前はうちの作家だ。俺が絶対にお前をベストセラー作家にしてやる。…お前は、天才だ。」
コイツはまだ、未来天才作家として世界中でもてはやされる存在になることをまだ知らない。
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