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玄関でそんな話をしていると、男の職員がこっちへ向かってきた。
「立ち話もなんですから、どうぞ中へ。」
「…どうも。」
そう言われるままに俺達は奥へ通される。
子供へ目を向けると、さっきとは代わり両手で口を抑えたまま、まるで息を殺すようにしてゆっくりと職員の後ろを歩いていた。
…耳を澄ますとガチガチと歯の当たる音が聞こえてくる。
「おい。」
「は、…いっ……」
「大丈夫か。体調、悪いんじゃないか。」
「…ぁ…、…っ大丈夫です、大丈夫…っ…」
「…そうか。」
どう見ても大丈夫じゃないだろ、なんて突っ込みたいがどうやらコイツは俺にも怯えているらしい。
まぁあまり愛想がいいほうではないから仕方がない。
施設の中の談話室へ通されると全員の前に熱いお茶が出される。
俺、女教師、それから職員はすぐに手をつけたが子供は相変わらず口を手で押さえたままだ。
「それ、飲まないのか。」
「え…飲んでも、いいん…ですか…?」
「当たり前だろ、それはお前のお茶だ。」
「ありがとうございます、っ…」
そう言うと、すぐに手を伸ばし湯のみを逆さにする勢いで中身を飲み干した。
相当喉が渇いていたらしい。
…明らかに異常だ。
「それで、今日はうちの憂くんになんの御用が?」
「実は憂くんの…」
「待て、俺から話させてもらいたい。」
女教師の言葉を遮る。
何かおかしい。
この子供が愛されて育てられたようには見えない。
そんな大人にそのままに話して納得してもらえるか?
もしかすると虐待を受けていて、その理由に使われるかもしれない。
これが原因で状況が悪化すれば元も子もない。
全て、憶測の話だが。
「なぁ憂。俺の里子にならないか? 」
「里子……?」
「あぁ。今お前はここで育てられているが、そうでなく俺の家で暮らすんだ。事実上は親子として。もちろん父親と思えなんて言わない。
ただ俺の家で自由にやりたいことをやればいい。」
「待ってください。そういった事は子供に直接言われては困ります。」
「言ってはいけない、というルールはない。続きは憂と直接話したい。あんたは席を外してくれないか?」
「…わかりました。」
半ば追い出すようにそう言うと、職員は渋々部屋を出ていった。
俺と女教師と憂だけの3人がその部屋には残った。
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