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元通り
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暗い暗い夢の中。
闇に堕ちて 堕ちて 沈んでいく。
あれ ここは朝?
「…ん、……」
目を開くと薄暗い部屋で一人、眠っていた。
ここはどこかな。
なんて思いながら身体を起こすと身体中がピキピキと音を立てて石みたいにあちこち固くなる。
なにか無理をしたか、と思い出そうと一度目を閉じる。
「死にたい?」
そんな声が聞こえて、ハッと目を開く。
そうだ。
俺はあの人に。
けれどここはどう見ても家ではなくて、体は自由だ。
どうしてかわからずまた記憶をたどる。
そう。
誰かが助けてくれたんだ。
俺の記憶には詳しく残っていないけれど。
ここで眠っていて…それで、…?
「…一度、目が覚めたはずなのに。」
目が覚めた時、確かに傍にいた誰かを思い出せない。
誰かが俺の手を握ってそこにいてくれたのに。
あれ…?
俺の名前を呼んでいてくれたのに。
何の話をしたか、どんな姿でどんな声だったか。
全く俺の記憶にはない。
あぁ これだから自分の記憶は信用ならないんだ。
自分に不合格の判子を押したところでようやくカチカチの体を起こし終える。
眠っていたソファにもたれて見なれない部屋をキョロキョロと見回す。
手足が痺れて血が通っていない。
…あのよく分からない薬のせいかな。
「ねぇ、少しはあの日から変われた?」
誰もいない部屋へ問いかける。
もう10年近く前の自分は、あそこから飛び出て今本当に幸せなんだろうか。
またあの人が俺の前に現れた時すぐに"幸せ"だと答えられるのだろうか。
無理やり違う自分に化けたフリをする俺は痛々しくて仕方ない。
本当にそんな風に笑う人間だった?
「…おかしいよ。」
そう言ったって誰も肯定も否定もしてくれない。
逃げて逃げて生きてきた。
今更、正しい生き方もわからない。
なんのためにいるの?どうして?
誰にも必要とされないのに。
愛されたい、愛されてみたい。
溶けて何もわからなくなるくらいの深い愛を感じてみたい。
そんな価値 俺にはほんの少しだってないのに。
わかってるのに。
「…藍、…会いたいよ。」
俺を必要としてくれた、藍に会いたい。
どうしても死ねない俺を許してくれるかな。
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