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一段落すると司会の人がマイクを持ち直し手をあげ観客席へ大きく声を上げた。
「さぁ、最後の質問です!質問したい人!」
その声に皆が声を上げながら手を挙げた。
最後、なんてよく言うけれど二人しかいなければ最初か最後の二択しかないのに。
俺はぼーっと座席を眺めていると一人の男性へマイクが向けられた。
灰色のパーカーを着た当たり障りない見た目の人だ。
「藍川さんへ質問です。」
その声にハッとする。
このメンバーでまさか俺が選ばれるなんて思ってなかった。
俺は「はい。」と返事をするとその人は片手でマイクを自分へ近づけるとトーンを変えずに言った。
「どうしてまた芸能界に帰ってきたんですか?」
「…え?」
「1度、本も書かずに何も出てこなかったくせにどうして戻ってきたんですか?お金のためですか?芸能界ってそんな甘えが効くんですか?」
その言葉に少し驚いた。
どう答えるべきなんだろう。
会場がざわめいて、司会の人の目が泳ぐ。
…あぁ俺への質問は俺が答えないと。
「どうして、…かなぁ。お金のためではないってそう言いきれます。本は書けなくなったから書きませんでした。」
「それは、…」
男性がまた質問をしようとするとスタッフさんが慌ててマイクを取り上げる。
けれど男性は無理矢理にマイクを奪い取り俺をまっすぐと見て声を上げた。
「それは自分で書いてなかったからですか?俺、昔から貴方が大嫌いでした。何も努力してないですよね、見た目だけが取得でチヤホヤされて。それって……」
そこでマイクが取り上げられキーンとした音が会場へ響いた。
会場が静まり返る。
誰も、何も話さない。
俺が なんとかしないと。
「……僕、は…本を書くことが好きです。」
そうとしか言えなかった。
どうして皆、俺が本を書いていないと疑うんだろう。
どうして?
俺は これしか出来ることがないのに。
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